HicK

踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!のHicKのレビュー・感想・評価

4.2
《長所短所、共にチョモランマ》
〜「愛」が脚本より勝る功罪〜

【ギャップ】
劇場鑑賞時は高校生の頃。小学生の頃からファンだった自分は案の定、どハマり。「キャラクタームービー」として見ればシリーズで1番好き。だけど、今作のアラを聞かれれば、喜んで永遠と喋れるような作品。ファン視点での出来と映画的な出来には大いにギャップがある歴代邦画実写No.1作品。

【ファン感謝祭】
オールスタームービー。今作までに登場人物たちへの肩入れを完了していれば、感情を動かす場面は増えている思う。キャラの配置はファンの期待通り、活かし方は期待以上、っていう印象。前作を踏襲した展開は「フォースの覚醒」のような接待路線。伏線やサブストーリーの数もかなり増え、濃いサービス密度。そして、実際のお台場の発展と重ねた"ありとあらゆる要素のド派手なスケールアップ"は作品自体が育ってく姿にも見えてファン心理を突く。支持者に対して凄まじい吸引力を持つ作品。

【映画作品としては】
ファンサービスとスケール感だけではなく、脚本の粗さとクセ強のオタク演出も更に増し増しの盛り盛りに。全体的に悪ノリ多し。演出で言えば、行き過ぎたコメディーの変な"間"は当時から気になってた。そして、"日本的ジレンマ"の「踊る」テイストがド派手さに隠れ始めた作品でもある。

ツッコミどころがお祭り状態。茶番劇になったオープニング。時々、湾岸署側と本庁側の言い分がどっちもどっち(今作に限らないけど)。いくらなんでもサイコパスな初女性管理官。脚本家の偏見による安易な殺人動機。全ての犯人が自ら寄ってくる「踊る」パターン。「事件枠」増設要因のみの岡村隆史。常時耳栓?。用がないから洋梨。そんなに役立たないネゴシエーター。致死量超えの流血。からの「血ください」。一晩経ってからの台場封鎖(でもなぜかまだ台場にいる犯人)。最後、またもや犯人と偶然接触…。

【テーマ】
色んなテーマを盛り込みすぎて回収が弱かったりするのも残念。ただ、その中でも、『「縦に繋がる組織(警察)」に勝る「横に繋がる組織(犯人グループ)」』からの『リーダーが優秀なら(縦)組織も悪く無い』っていう流れは、シリーズとしてのアンサーにも感じた。(でも結局、リーダーが「横」にしてくれたから「縦」が勝ったっていう煮え切らなさはあるけど)。クライマックスの室井のシーンはシリーズのゴール的な光景。これが私にとっての完結作。

【総括】
全ての要素がチョモランマ級の増し盛り具合な第2作目。ニーズを最優先に置いた戦略で、ファンの愛が映画としての出来に勝った作品。ファン心理を見透かし、キャラクターがどう動けば心を掴めるかを把握してる点は、優秀な策士として結構評価してしまう。自分を含め多くの支持を集めたのも必然とも思える。

一方、今となって考えると、『TVシリーズの映画化は爆売れする』と邦画界に知らしめた前作に続き、『"推す力"は偉大なり』と歴史的な成功例を業界に見せつけた点においては少し複雑。現代のショービジネス(推しビジネス)の成功方程式を生み出し、功罪を残してしまったと言ってもいいかもしれない。実力主義ではなく人気主義。分岐を作った怪物作品。

【それにしても】
あの「バキューン、血、ブッシャー」のシーン、よくバレずにお台場のど真ん中でロケできたよなぁ。やっぱり深津絵里といかりや長介が最高っす。
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