きょう

インフィニティ・プールのきょうのネタバレレビュー・内容・結末

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

「殺人を犯した者は死刑になるが、多額の費用を払えばクローンを身代わりにする事ができる」という奇っ怪な設定に惹かれる。
これをリゾート地側が裕福な観光客目当てに敷いている制度というのも厭らしい。

祭り用のマスクも妙な肉感が不気味で唆る…。

だが話が進むと、主人公が金持ちの道楽に弄ばれ、堕落し、人生を破壊される様をひたすら描く内容となっており『闇金ウシジマくん』を見ている感触が強くなってくる。
件のクローン技術やスワンプマン思考実験に対するアンサーを期待していた所もあり、総合的には小さく纏まってしまい物足りなさが拭えなかった。
仮面の造形が失敗したクローンを元にしているとか想像したがそんな事は無かった。

ミア・ゴスの怪演も素晴らしかったが『X エックス』『Pearl パール』で類似の狂気を体験済みで個人的に新鮮味が薄かった。授乳シーンはドキドキしたけど!

ブランドン・クローネンバーグ監督は独自のSF設定を深堀りするよりも、そういう世界を当たり前としてその上での人間性を描く趣向なのかもしれない。

前作『ポゼッサー』から続く、酩酊状態のサイケデリックなフラッシュバック映像に全力な所はかなり好き。
ただ、あんなに色んなカットが散りばめられているのにその場だけで他のシーンに効いてこないのが勿体無い。。

ちなみに "インフィニティ・プール" とは縁まで水で覆い、海や空と境界が混じり合うように設計されたプールの事らしい。
自身で罪を背負わない制度により倫理観のタガが外れ暴力性が露わになった時、その暴力性を向けられた時に自分はどう変わるのか。

主人公は人間性の境界線を無くしたように雨季のリゾート地で独り茫然自失となってしまったが、周りの金持ち達は何事もなかったように日常に帰っていく。
その対比が異様に恐ろしい終わり方だった。
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