ちこちゃん

コット、はじまりの夏のちこちゃんのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
4.0
「沈黙」がテーマになっている映画です
原題もその通りquiet girlです
そのため、極端にセリフは少なく、静かに物事が進んでいく映画です。
そして、主人公の少女コットが美しく、透明感に溢れ、ひと夏で成長することが描かれます。本当に可愛い女の子で、この子が演じたから成り立った映画と言えます。
そして、舞台となるアイルランドの農場、木漏れ日、並木道が美しく描かれます。


主人公のコットは、貧乏で子沢山、賭け事で牛を失った干し草を刈る人も雇えないぐらいの甲斐性のない父親と産月近くの母親の元で育ち、家族にも馴染めず、姉妹からも疎んじられ、学校でもハブられているため、話すことが出来ず、「沈黙」をしている少女です

父親は食い扶持を減らすため、叔父夫婦に夏休みの間、コットを預けることにします。
コットに叔母が沈黙の理由を聞くと、秘密は話してはいけないと家族に言われたと答え、それに対し、秘密があるのはよくない家族で、この家族には秘密はないと叔母は話すのですが、これが伏線となります

人に受け入れられたことがないコットが、叔母に受け入れられ、無愛想な叔父にも日を追うごとに受け入れられます。この状況が静かながらも、髪をとかしてもらうこと、お風呂に入れて洗ってもらうこと、叔父の牛舎の掃除を手伝うこと、黙っている叔父がお菓子をテーブルに置いてくれること、甘やかすのだと言って3人で街に繰り出し叔父がお小遣いをくれ、洋服を買ってくれること、などを通じて描かれていきます。そして、コットも自分の居場所を見つけ、沈黙を破っていくことになります

ひょんなことから、叔母夫婦の秘密を知ったコットはそのことを叔母夫婦に話し、叔母に辛い過去を思い出させ、傷つけていまいます
そんなコットに叔父は「沈黙は悪いことではない、沈黙しないことで、人は多くの機会を失う」と話すのです。これがこの映画における監督のメッセージかもしれません。

このことから、少し大人になったコットは、夏休みが終わり、実家に帰って来た時に、叔母の家で風邪をひいて寝込んだことも親に話してはいけないと判断し、「沈黙」することを選びます

そして、心を通わせた叔父叔母との別れがやってきます
この最後の場面のために、この映画はあると言っても過言ではないと思います
泣きました

スリリングのことが起こる映画ではないですが、人の感情や繋がりが丁寧に描かれていて、切ない情感が残る映画でした

映画を紹介して下さったこなつさんに感謝です
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