T太郎

プロトタイプA 人工生命体の逆襲のT太郎のレビュー・感想・評価

3.7
1042
SF映画だ。
人間とは?
生命とは?
そんな哲学的な事を考えさせられる作品である。

邦題は無視して構わない。
こんなに内容にそぐわない邦題も珍しいのだ。
誰や、これを考えた奴は。

主人公はアイシャという女子高生だ。
恋人がいて、友人がいて、父親との関係も良好で普通の高校生に見える。

だが、彼女はよく気を失う。
何か持病があるのだろうか。
心配だ。

そして、シャロンという女性からカウンセリングを受けている。
何か悩み事があるのだろうか。
心配だ。

ある日、アイシャは誤って腕に深い傷を負ってしまう。
パックリいってしまうのだ。
痛い痛い痛い!
痛・・い・・・?

やや!傷口がなにやら光っているぞ。
なんじゃ、これは。
何かの部品か?
なぜ、腕の中がこんなにメカメカしいのだ。
彼女は愕然とする。

そう、彼女は精巧に作り上げられたロボットだったのである。
完全に自分の事を人間だと思っていたのに、思い込んでいたのに・・ロボットだったなんて!

彼女はシャロン先生に助けを求める。

しかし、シャロン先生は全てを知っていた。
彼女は何食わぬ顔でアイシャの記憶を消去するのだ。

ただ、シャロン先生はザックリと記憶を消去するので、アイシャは友人関係に亀裂が入ったりする。
友人との約束や会話なども一切忘れてしまうからだ。

これは一体どういう事なのか。
何かの実験なのだろうか。
常に監視されているようだ。
当然、父親も知っている。

消去された記憶を復元した時、人間としてのアイデンティティが崩れ去り、彼女は途方に暮れるのであった。

一方、ある企業が登場する。
ロボット製造を専門としていて、アイシャほどではないが、精巧な人型ロボットを製造・販売している。

この企業がアイシャの存在に気づき、彼女の“回収”に乗り出すのである。
敵役と言えるのだが、彼らの言い分も一理ある。
アイシャはあまりにも人間になり過ぎたのだ。

父親とシャロン先生は、彼らからアイシャを守っていたのである。
果たしてアイシャの運命や如何に!
そんな物語だ。

ジェニーという同級生の少女がいる。
彼女とアイシャの物語が切なくて非常にいい。
やけにアイシャに絡んでくる、いっちょ噛み女かと思いきや・・・

実は以前、アイシャとジェニーは友だち以上、恋人以上の関係だったのだ。
記憶を消去され、プツリと関係が絶たれたのである。
一人取り残された格好のジェニーが、可哀想で見ていられなかったのだ。

代わりにこの私が、友だち以上、恋人以上の関係になって差しあげてもよろしくてよ、なんて事を思った次第である。

冒頭でも述べたが、これは非常に深遠なテーマを内包した作品なのである。
機械の体ながら、アイシャには人間と寸分違わぬ感情が備わっているのだ。
親子の情愛、姉弟の情愛、恋愛感情、友情、喜怒哀楽・・

実は自分にそんな感情などなくて、後付けされたデータに過ぎないのでは、と思い悩む場面があったりする。
その感情がすでに人間のそれである。

一体人間とは何なんだろう。
私の方がよほど感情が乏しいと言える。
私の心を支配している感情は、なんとか美女とお近づきになりたい。
これ一点のみなのである。

私はロボットなのだろうか。
(ただの助平やで)
T太郎

T太郎