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オーストレイリア映画だ。
リベンジ・スリラーとでも言ったらいいのか。
リアリティがあり良かった。
面白かった。
ちなみに、かの有名なナイチンゲール女史とは全く関係ないチンゲールである。
物語の舞台はタスマニア島だ。
オーストレイリア大陸の南東にある、大陸の切れ端みたいな大きい島である。
(言い方失礼やで)
時代はどの辺だろう。
よく分からないチンゲールなのだが、多分19世紀のどこかだと思われる。
知らんけど。
寡聞にして、私はオーストレイリアの歴史にとんと疎いので、物語の背景をあまり理解できていなかった。
そこは誠に忸怩たる思いがある。
だだ、作中でも度々触れられているが、人種差別がかなり酷かったらしい事は聞いた事があるのだ。
主人公はクレアという若いアイルランド人の女性だ。
彼女は元流刑囚らしい。
という事は、まだオーストレイリアが流刑地だった頃の物語なのだろう・・・か。
ん~・・・知らん。
知らないチンゲールだ、
そんなクレアには愛する夫と幼い乳飲み子がいた。
暮らしぶりは貧しいながら、幸せな家族だったのだ。
一方、この町に駐屯しているイギリス軍がいる。
非常に規律の緩い、たるみきった部隊だ。
兵士たちは下卑た野郎ばかりである。
そこの隊長である中尉も、全くもって見下げ果てた鬼畜のような男なのだ。
彼は大陸での勤務を希望している。
早くこの島から出たいのだ。
よし、島の北部に駐屯している上官に直談判に行こう。
きっと認められるはずだ。
だが、その前に・・・
クレア一家は中尉ら3人に急襲される。
両者の間にはがっつり遺恨があったのだ。
クレアはレイプされ、それを止めようとした夫は射殺される。
挙げ句の果てに、泣き止まない赤ん坊までも・・・。
クレアの目の前で。
なんて事だ。
これが軍人のやる事か。
獣にも劣る外道の所業である。
奴らは先住民の案内人と流刑囚3人(うち一人は10歳くらいの少年)の荷物運びを従えて、町を出た。
一命を取り止め、目を覚ましたクレアは嘆き悲しみ、怒り狂う。
憤怒の形相で奴らの後を追うのだ。
先住民のビリーという黒人青年を案内人に・・・。
この追跡行が物語の大部分をなしている。
先住民に対して偏見を持っているクレアと白人を憎んでいるビリー。
この二人の関係性がどう変わっていくのか。
ロードムービーのような味わいもある作品なのだ。
だが、非常にハードな旅である。
奴らが通った後には、破壊と暴力の跡が累々と続いているのである。
白人も黒人もない。
女はレイプし、男と子どもは殺してゆく。
悪魔としか言いようがない。
果たしてクレアの復讐はなるのか。
どのような旅の終わりを迎えるのか。
乞うご期待!
そんな作品である。
先住民であるビリーはもちろん、アイルランド人のクレアもイギリス人をひどく憎んでいるのだ。
そんなクレアがビリーに問う。
「黒人の中にも中尉みたいな人間はいる?」
「中には、いるよ・・・」
この会話に製作者の公正性みたいなものをふと感じた。
征服者たるイギリス人や白人の所業が最悪なのは大前提として、それを凌駕する悪魔の如き人間は人種を問わずいる。
それを先住民のビリーに正直に言わせているところに意図を感じるのだ。
勧善懲悪でもいいのに。
先住民は純然たる被害者でもいいのに。
そう描いても良かったのに。
まあ、深い意味はなかったのかもしれない。
その後のビリーの行動につなげる接続語的な会話だったのかもしれない。
ビリーの回答がちょっと意外だったので、印象に残ったのである。
私はてっきり、こう言うと思っていたのだ。
「僕たちの仲間にあんな奴は、いないチンゲールだよ」
と・・・