KengoTerazono

アダマン号に乗ってのKengoTerazonoのレビュー・感想・評価

アダマン号に乗って(2022年製作の映画)
-
インタビューは一見シネマ・ヴェリテ的だが、作り手が被写体を挑発するわけではなく、語る姿にただ耳を傾ける。キャメラのアダマン号への溶け込み具合といい、ダイレクトに被写体が語る映画になっている。というよりも、キャメラがいかに空間に溶け込んでいる(ようにみえる)かが肝のように感じた。ナラティブに観客を絡めとることを意図しているとも言える。

長焦点距離のレンズによるズームイン/アウトを機動性の面から使っている部分もあるが、それによる親密さの効果もみられる。インタビューの際、彼らはなぜあんなにも雄弁に喋るのか。撮り手の姿勢もさることながら、撮り手と観客の位置のズレも肝心だと思う。キャメラは必要に応じてズームイン/アウトを行い、ショットサイズもクロースアップからミディアムショットと自在に変わる。スクリーンに映る客体の見え方は、観客と撮り手でそれぞれ異なる。客体も一見キャメラを見ているように思えるが、視線は微妙にズレていて、キャメラの向こう側にいる人物を見ている。撮り手は決して客体のプライベートゾーンを跨がない。客体を侵食しない程度に歩み寄り、相手に耳を傾けている。だから長焦点距離のレンズでなければならない。客体との絶妙な距離感と、それとは異なる観客と客体との近さが、観客と客体との親密さの演出になっているように感じた。客体に斬り込んでいくような眼差しとは異なるベクトルに、フェリベールのレンズはあるのだなと思った。
KengoTerazono

KengoTerazono