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ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争のKengoTerazonoのレビュー・感想・評価

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クラシカル・ハリウッド・シネマにおけるオーソドックスな脚本は冒頭約30分で物語の下準備、ベースとなる状況や設定を説明する。この映画はその30分だけ観せられ、劇場外へ放り出されるようなものだと思った。最初に『奇妙な戦争』の予告編と銘打っている通りと言えばそうなのだが、これから面白くなっていきそうなところなのに、この映画のベースが掴めてきたところなのに、尻切れトンボで終わってしまう。なんて仕打ちだ。これで死んでしまうなんて。とんだ自分勝手な人だ。この気持ちをどう処理すればいい。このもどかしい気持ちのやり場が見つからない。

静止画のショットが長いようにみえて、引用された文字や音、細切れの写真、フィルム、絵画を観るのに精一杯で、かえってもう少し時間が欲しいくらいだった。音が急に鳴ったりやんだりするからその度に驚いた。

『奇妙な戦争』は自分で紐解くしかない。テクストから辿るしかこの映画を観る術はない。観客自身が完成させるしかない。私はいつになったら『奇妙な戦争』を観ることができるのか。
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