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パスト ライブス/再会のTaulのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
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『パスト ライブス/再会』先行上映。
主演二人はもちろんジョン・マガロが素晴らしかった。
良すぎた。切なすぎた。泣きすぎて頭が痛い......

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『パスト ライブス/再会』恋愛映画というくくりを超えて、人生の選択やアイデンティティについての映画だった。男女や年齢問わずいろんな層に刺さるのではないだろうか。またアメリカにおける移民映画としての継承も感じた。それと日本の観客はタイトルのちょっとした気付きがあるのも楽しいと思う。

前世とは言わないが、何か特別な縁があったように心に住みついてしまってる作品だが、本公開されたら再会したい。

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『パスト ライブス/再会』の撮影監督はシャビアー・カークナー。ドラマシリーズ『スモール・アックス』では、パーティや街を往く様子など良いショットが多かった。今回も場所が持つ魅力と佇む人物をムーディーに撮っていて目が潤ったし、画が物語っていた。この人の撮影なら今後も見よう、とチェック。


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『パスト ライブス/再会』冒頭、タイトルの単語の配置でまず心掴まれた。邦題が・を使わずスペースなのが、それに応えたみたいでいい。

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『パスト ライブス/再会』はFacebookが流行った時に迂闊に再会をしてしまった、あるいは意識的にしなかった者には特に刺さるのでは。

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『パスト ライブス/再会』は自由の女神を見るという、アメリカへの移民の映画の伝統を引き継いでいる。ただ入国時に拝むものではなく、もはや地元の象徴のようでもあり、使い方が巧いと思った。

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昨年の私のベスト『aftersun/アフターサン』のシャーロット・ウェルズと、今年のベスト候補『パスト ライブス/再会』のセリーヌ・ソン。1987年生まれと1988年生まれという同年代の女性監督が、自身の経験を元に奇跡的な完成度の長編デビュー作を撮った。こういう才能がさらに続けばいいなと思う。

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『パスト ライブス/再会』は、立ち位置、進む方向はもちろん、服、背景のものや描かれてるもの、傍に佇む人、と映り込むさまざまなものが、二人の心情や状況、運命といったものを豊かに語っていた。ラストはその結晶。緻密な映画設計とデビュー作の思いきりが生んだのだろう。そのせいか嫌らしい感じがせずにその技に酔えた。

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『パスト ライブス/再会』は、幼い時の好きになるエピソードや、会えない頃の相手への思いを、取り立てて描かない。物足りないなと思っていたが実はそれが良かった。引きずり過ぎの感じを薄め、NYでの再会からは入り込める余白に反転した。そして恋バナを超え、人生における縁や選択の話になっていく流れに、素直にのれたように思う。

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『パスト ライブス/再会』は、エンディングの映画技巧の素晴らしさ、3人の感情の読み解きは何時間でも語れるが、オープニングもまた絶品だった。
3人の関係性は?とぐっと惹きつけ、三角関係になるのかという不安もインプット。(終わってみると)人さまのご縁や関係性は測り知れないという感慨への扉になった。SNSで他をとやかく言うことの浅薄さにも通じる。冒頭から多層的で驚く。

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『パスト ライブス/再会』は、映画表現の素晴らしさやその読み解き、人生の選択やアイデンティティ確立のサンプル、恋愛観や価値観でいいたいこと、自分の経験を思い出しての照らし合わせ、といろいろ語れる要素が多い。Podcastを聴いても、盛り上がることが多いようだ。
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