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パスト ライブス/再会のTenKasSのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
5.0
初台のオペラシティにある口を開け閉めし続ける巨人のモニュメントと同じものが、韓国にもあるんだ!という謎の驚きで幕を開けたけど途中で忘れたくらいよかった。音楽が全部好みで超気持ちよかったのもあるけど映像も全部気持ちよかった。

干支が一周するたびに再会する幼馴染。メリーゴーランド、Circle Line Brooklyn 、輪廻転生等々「回る、巡る」というモチーフがある中、カメラの横移動は平行線を辿り続ける二人の交わらない関係性を、ずっと示し続ける。

ノラのグレタ・リーの笑った時の目尻にずーっとやられまくった。三十代になった彼女は今目の前に見えるもの、今持っているもの、今立っている場所、自分の今の考え方や感じ方をしっかりと捉えていて初恋の強靭な引力に引っ張られない。それをわかってはいるけどあり得たかもしれない可能性を考えて口にしてしまうヘソンとアーサー。この二人を嫉妬し合う情けない男性像として描かれたら流石に私自身男性として悲しいなと思ったのだがそんなことはなく、互いへの尊重(握手まで交わす!)で示せる可能性と優しさに涙するのだった。『ファーストカウ』で優しさの権化みたいだったジョン・マガロをキャスティングする偉さ。ユ・テオの今ではなくどこか別のところを見ているような目線も素晴らしい。ヘソンは同じ店で同じ友人とずっと呑んでていい友達いるなぁいい奴なんだなと羨ましくもなった。
最後にそれぞれの生活に戻るのを丁寧に見せるのもいいし、ノラが押し殺していたものを解放するようにアーサーのところで泣くのも良い。
WOKEじゃない普遍的な恋愛映画だからみんな飛びついて高評価なのかなと穿ったことを考えながら観に行ったけどとんでもない。もっともっと洗練された映画だった。

しかしSkypeの着信音もFacebookも懐かしすぎた…後者はアカウントさえないわ。
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