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ビヨンド・ユートピア 脱北のMKのレビュー・感想・評価

4.5
『戦争は平和なり 』
『自由は隷従なり 』
『無知は力なり』

言わずと知れたジョージ・オーウェルの「1984」の一節が繰り返し想起される映画だった。

作品は二つの家族の脱北をせざるを得なかった事情と、北朝鮮という国の実情をコメントと実際の脱北の映像で構成したもの。

面白いとか悲しいとかそういった感想は持ち得なくて、「亡命」と「脱北」は似て非なるもの、彼らは必ずしも境遇を否定してきたのではなく、境遇から否定されてきたということについてとても考えさせられる作品だった。

失楽園ではなく超楽園?
楽園だと思ったその場所は唯一無二の場所ならあきらかに楽園だったに違いない。

でもそれって北朝鮮に限ったことなのかな?なんて。

ロクに賃金も上がらないのになんでもかんでも驚くくらい物価は上がってるに、最新の機器と通信環境を与えられてまだまだ先進国?

どこかの島国だって外からみたら大差ないのかもしれないと思ったら少し怖くなる。
新宿の高めのランチ代じゃハワイでは板チョコしか買えなかった訳だし…

知らなければいまでも故郷は楽園だったに違いない。真実を知ることの大切さと怖さ…そして真実とはなにか?

楽園はやはり作り上げられた幻想でしかないこと、その幻想は限られた権力者の体制護持の為でしかないということ、さらにはそれらは民主主義においても大差ないのではないかということは肝に銘じておきたくなった。

それにしても脱北するために、隣接の韓国で暮らすために陸路で中国、ベトナム、ラオスを経てタイに行く必要があるだなんて知らなかった。しかも行く先々には脱北をビジネスにするブローカーたち。

韓国の牧師様の偉大さ、80歳になって楽園は楽園ではないと知らされた祖母。12時間歩かされても泣き言ひとつ言わない幼い子どもたち。

やるせない事情満載だったけど北を逃れる人々はどうにも愛おしかった。

民主主義と社会主義が引いた乱暴な境界線を隔ててまだ戦争中?
国境って本当に不思議
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