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52ヘルツのクジラたちのMKのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
4.5
観に行って良かったー。

すごく好きな雰囲気の作品…結構泣いた。
観ている最中の感覚としては不思議と「ベイビー・ブローカー」が想起された。

自分の不遇や不運に対する怒りや悲しみの対象が外界に向かないような…どうあっても寂しい存在のキコ、世間の誰にも自分の真実を打ち明けることのできない孤独なアン、母から愛されたことがないばかりか存在すら否定され声までも失ってしまった52。

52ヘルツのクジラとは発する声が仲間たちに届くことのない孤独なクジラのことらしい。

でも海は広くて大きいし、もしかしたらタコやサンマがクジラの歌に耳を澄ませているかもしれない…人間だってそうに違いない。微かな心の叫び声だって、遠くの若しくはすぐそばの誰にどどいているかもしれない。

心の有り様を決して叫ぶことも伝えることこないキコとアンと52。そんな3人だからこそめぐり合い心を通わせることができたのだと信じたい。

物語の展開も境遇もずっしり重めなんだけど、3人のキャラクターがどうにも優し過ぎるせいで救いや幸福が訪れる展開を待ち侘びながら観ることができた。

想いも虚しく物語はクライマックスに向けて哀しい出来事ばかりが起きて切なくなるしかないのだけれど、最後はハッピーエンドではないとしても自分にとっては思い遣りと救い、希望に満ちた温かな終わり方だと思えた。

人生最初で最後の魂の揺さぶりなんて切なすぎるじゃないか…そしてそんな想いに後押しされるかのようなキナコのクライマックスの叫び、告白。
魂の番は別に3人でもいいよね…うん。 

風景も音楽もとても居心地が良かったし、アンコとキナコの心のやり取りをもっとずっと観ていたかったなぁ。

にしても杉咲花ちゃんは本当に素敵。
キコとキナコが涙するシーンが沢山あってどれもグッときてしまったのだけれど、あんな色んな泣き方出来るなんてどんな感情移入なんだろう…久しぶりに鼻プクも見られたし。

というわけで「湯を沸かすほどの熱い愛」ぶりに杉咲花ちゃんにたんと泣かされた。


茶化すつもりは毛頭ないけれど、序盤での杉咲花ちゃん演じるキコから漏れ聞こえた「生きたい」はニコ・ロビンの濁点つきのソレを自分のなかで余裕で超えていった 笑。

帰り道、何人かのお客さんが「氷魚…」って言ってた…上手く言えないけどわかる気がする。
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