彦次郎

虎の尾を踏む男達の彦次郎のレビュー・感想・評価

虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)
3.5
源頼朝から追われる源義経一行が奥州へ逃げるため加賀国安宅の関を突破しようとする一幕モノの時代劇。敗戦直前の物資不足の中で制作された巨匠黒沢監督の作品で後にGHQが「反民主主義映画」して上映許可が認められなかった曰くもあります。
原作は歌舞伎『勧進帳』(これも能の『安宅』を元にしているらしい)。カッコいいタイトル名ですがこれは”謡曲「安宅」の一節「虎の尾を踏み、毒蛇の口を逃れたる心地して、陸奥の国へぞ下りける」から取られており”(wikipediaより)とのことです。ちなみに『勧進帳』は山伏姿に変装した一行を関守の富樫左衛門が疑いをかけた際に武蔵坊弁慶に勧進帳を読み上げさせたところから取られているのでしょう。
本作の特色としては原作では未登場である強力(荷物運び案内人)がお笑い要因として深刻になりがちな話に彩りをもたらしています。この強力を演じたのは喜劇王と言われたエノケンで主役の弁慶と双璧をなす存在感でした。普通なら知略をもって関所を突破しようとするサスペンス部分が第一となりますが、富樫左衛門は義経を打ち据える弁慶の忠義心をも見抜いて見逃すというところが日本人的でした(これは作家の井沢元彦先生も指摘されていました)。
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