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テトリスのGreenTのレビュー・感想・評価

テトリス(2023年製作の映画)
3.0
ヘンク・ロジャース(タロン・エジャトン)は、日本を拠点にヴィデオゲームの開発・販売をしていたが、自分の開発したGO(碁)というヴィデオゲームはラスベガスのCESでは全くウケない。代わりに、テトリスと呼ばれるゲームに出逢い、これは大ヒットになると販売権獲得に奔走する。

いや~、ヴィデオゲームの権利ってこんなに大変だとは知らなんだ。コンピューター・ゲームとして販売する権利、ゲームセンター用の機械として販売する権利、家庭用ゲーム機の権利、そして当時ニンテンドーがハンドヘルドを開発中だったため、その権利は新しく作らなければならない。

また、テトリスの権利を欲しがっている人は複数いて、その人たちと騙し騙され、なんか「俺が権利持ってる」とか「権利はアタリに売った」とか、嘘ついてるよね?そうやってお互いを出し抜きながらやるらしい。めんどくさ~

しかもテトリスを開発した人が当時のソビエト連邦の技術者なので、国を相手に権利獲得をしなくちゃならないのだが、「鉄のカーテン」で西側の人の入国とかもすごい難しい。しかも、共産主義崩壊を目の前にして、賄賂をもらって国が崩壊した後を生き残ろうとするKGBがいたりして余計話がややこしくなる。

私はテトリスにハマったことがないので、つかヴィデオゲームはDOOMしかハマったことがなくて基本的に興味ないので、前半の権利獲得は「こんな史実に忠実に描かれても」って途中で止めようかと思ったけど、後半ソビエトに舞台が移ってからは興味が出た。ソビエトの実情って、全く知らなかったわけじゃないけど、このテトリスを開発したアレクセイ・パジトノフって人が、KGBにすごいいやがらせされたり、「ここまでなの?!」って思ってたら、iMDbに「この映画でのソビエトの描写を、共産主義を批判するプロパガンダだと言う人がいるが、とんでもない!本当にこんな感じだった。コメを2ポンド買うために8時間並んだこともある」って感じの投稿が複数見られた。

で、ヘンクがアレクセイに「普通の人が行くところに連れてってくれ」って言うと、クラブに連れてってくれるんだけど、空き家になってたビルディングのフロアでラジカセで音楽流しているような、質素なクラブで、「80sだ~!」って感じの、だけどソビエトだからダサダサの人たちが、ソビエトのダサダサのニューロマみたいな曲(でも今聴くと趣があって良い)で踊ってるシーンが興味深かった。で、そこに『ファイナル・カウントダウン』がかかるとめちゃ盛り上がって、しかも英語の歌詞をみんなすらすらと歌っている!で、「ああ~音楽って共通言語だ!」って思って泣けてきた(笑)。

『ファイナル・カウントダウン』ってすっげー流行ったよな。スェーデンだっけ?ヨーロッパって名前のバンドだったんだよね。「いなたいなあ~」って当時は好きじゃなかったけど、今聴くとノスタルジーが(笑)。

あとさ、主人公のヘンクが、「俺はオランダとインドネシアのハーフだ。つまりエドワード・ヴァンヘイレンと同じなんだな」って言うシーンで爆笑した!まさかエドワード・ヴァンヘイレンがレフェレンスされるとは思わなかったから。そーなのよ!エディが(ってか兄貴のアレックスもそうなんだけど)インドネシアのハーフだって知ったの、つい最近なんだよな。やたらアジア人っぽい子供っぽい笑顔だったから、「なんかこの人日本人みたい。でも白人なんだ~」って昔は信じていたけど・・・・。だって、あんだけ音楽雑誌に出ていて、お母さんインドネシアの人だって言及しているものあった?なんかさら~っと見た覚えがないこともないけど、ほとんどそんなこと語られなかったよね?

めちゃくちゃ本題からそれるけど、80sのヘヴィメタ界って意外と「多様性」なんだよ。ヴァン・ヘイレンはオランダとインドネシアでしょ、ジェイク・E・リーはハーフ・ジャパニーズでしょ、ルディ・サーゾはキューバからの移民、シンデレラのギター、ジェフ・ラバーもハーフ・ジャパニーズ?ランディ・カスティヨはネイティヴ・アメリカン、スマパンのギターも日系だよね。

この映画、80年代の話だから、個人的にはヴィデオゲームよりそういう音楽レフェレンスの方がウケた。

あ、そうそう、この「インドネシアのハーフ」をタロン・エジャトンが演じたことを「ホワイトウォッシュだ」って言ってる映画評論家?がいるらしい。ラストネーム観ると中国系かと思われるんだけど。でもオランダとのハーフなんでしょ?オランダの人って白人よね?白人よりの顔になったらあれでもいいんじゃないの?つか下手に中国系とかアジア系の役者が演じたらそれはそれで違くない?って感じになりそう。

そんなドンピシャにオランダとインドネシアのハーフで演技上手くてスターパワーがある人なんて見つからないよ!最近のポリコレは度が過ぎてついていけない。

あ!もう一個トリビアがある。テトリスの販売権を獲ろうとしてヘンクと戦っているロバート・マックスウェルって人、イギリス拠点のヴィデオゲーム販売会社ミラー・ソフトの経営者なんだけど、この人9人も子供がいて、その一人があの、ギレイン・マクスウェル!!知ってる?あの、ジェフリー・エプスタインの少女のセックス・トラフィッキングに加担していた・・・・。

そんなことはどーでもいいのだが、ヘンクはニンテンドーの人とテトリス販売権を獲得して、命からがらソビエトから出国し、めでたくハンドヘルドにテトリス入れて販売するんだけど、ソビエトに残されたコンピューター会社の偉い人とか、それこそテトリス開発者のアレクセイとか「どーなるのよ!」って思ったら、アレクセイはアメリカに移民して、ヘンクとテトリスの権利会社?を創設したんだって?いや~良かった良かった。コンピューター会社の偉い人もソビエト崩壊後幸せになっているといいな・・・。
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