いの

夜明けのすべてのいののレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.0
瀬尾まいこの原作を三宅唱監督で映像化♪ 思わず相手の髪の毛ヘンテコに切って大笑いされちゃうくらいうれしい(意味不明) ボヘミアンラプソディーで大笑いはなかったけどま、いっかw


マリンバ(本当にマリンバなのかわかってません)で演奏しているような劇伴ではじまる。マリンバといったら「トゥルー・ロマンス」思い出すわたしは、冒頭から気持ちがほぐれていく。この劇伴なら大丈夫。寒さでかじかんだ心をあたためてくれる。(でも途中から少しだけ余計だと感じたりもした)


同じ職場のPMSの藤沢さんと、パニック障害の山添くん。生きづらさを抱えながらなんとかやろうとしている。それぞれがそれぞれ、だったのが、いちど正面からぶつかったことをきっかけに、少しずつ横並びの関係になっていくってことかな(横並びで歩く場面も多かった)。全部じゃなくても でもわかる、とか。全部じゃないかもだけど少しは助けることができる、とか。それがすこしずつゆっくり広がっていって、心も視野も広がっていって、仕事のよろこびとか他の人のことに思いを馳せるとか。


イライラ募らせ爆発しちゃったり、発作が起きたり。その場に居合わせた職場の人たちの対応の様子から、この職場の方々が、どんなにあたたかく、どんなに優しいのかが伝わってくる。そしてそれは苦しいところを通ってきた人としての来し方なのだろうか、など鑑賞者に想像させてくれる余地もある。身近な人を失った喪失感は埋めることなんてできないけど、でも、ゆっくりゆっくり歩いていこうと思えるような映画でもある。



北極星の役割は、いつか他の星に代わるらしい。宇宙だって気の遠くなるような年月をかけて変わってゆくことに少し重なるような結末にも納得する。渋川さんの泣き笑いのような顔に、気づけばわたしも涙をこぼしていた。光石さんのなにかの場面でも、きづけばわたしは泣いていて、それがもう一か所でもあって、なんか自分でもようわからないうちに涙がこぼれていた。でもそれは感極まるとは違くて、ゆっくりしずかにこぼれていくような涙で、こぼしたことでなにか映画に満たしてもらったのもののような気もしている



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・会社のなか、事務的な作業をする場が手前にあって、たぶん専門的な作業や打ち合わせをしてる場はその奥にあるのだけれど、奥が手前より高い位置にある。それは映像として効果的だと思った。舞台でいえば、手前と奥をつかって、ふたつの場面を同時にみせるような仕掛けだと思う。


・病気にもランクがあるのか云々、あの一連の場面での微妙な間とかズレとか、相当こだわって撮ったのだろうと勝手に想像した





〈追記〉2024.02.20
皆さまのレビュー幾つかを拝読してわかったことがあります。この映画のレビューでこの映画とおなじことが起きているんだなぁって。自分ではどうしようもできないなにかを、レビュー読むことで知らず知らず助けてもらってるような気持ちになります。読むと心がほんわかしてきて、自分に足りないものを、レビュー読むことで満たしてもらってる。すんごい連鎖が生まれているんだなぁって、今ようやく思い至りました。ありがとうございます♪


それから瀬尾まいこの原作も推したいです!映画から入ると映画の方がよいとお感じになるかとは思うのですが、原作には原作の良さがありますので。しかもとても読みやすいです。映画も良いし原作も良いです!
いの

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