そーいちろー

夜明けのすべてのそーいちろーのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.5
移動プラネタリウムのナレーションに至るまでの壮大なフリに近かった。そこでドカンと仕留める感じは、嫌いではない。三宅唱の映画は静かだ。静寂がかえって、その静寂に潜む音が反響してしまうぐらいに静か。ざらつく画面の手触りと目を凝らしてみないと大きな変化は見られない日常。原作の関係性を踏まえつつ、映画として新たに構成された物語は他者に容易には理解されづらい悩みを抱えた人々たちの姿を淡々と映し出す。星と人は同じで、暗い夜の中で、それぞれの距離と輝きをもって光を示す。暗闇の中の光を解釈し、道標とする事は映画を観続ける観客自身の姿でもある。夜明けは朝の序章ではなく、夜の終焉でもなく、ありふれた時間の流れのある一時点にすぎず、それは夜も朝も同様である。三宅唱には常に「次は来るはず」という予感を感じさせてくれる。それを避けるようにする三宅唱ではあるのだが。ほとんど語らずとも惹きつける画作りは流石だが、もっとやれるんじゃないかな、と期待させてくれる監督。
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