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夜明けのすべてのdarumaのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.1
評判が良いプラス三宅唱監督が決め手で観て来ました。折角なのでベルリン国際映画祭ダイジェスト付き上映回をチョイス。この回でよかった!三宅監督がすっごくたくさん喋ってたんですが(あんなに喋る方だとは知らなかった…!)、自分が思った事をそのまんま仰っていてちょっと感動した。

多分、(病気のこと)全然理解できていない。
けど、
全く知らなかった から、一歩だけでも近づけた 気がする。
それだけで観てよかったと思う。

この映画はラストが肝なんじゃないかな?
休み時間?会社の人々が思い思い自由に過ごしている。
キャッチボールのボールが飛んでっちゃう…だけど、笑って拾いに行く。
まさにそれが象徴している。
「共生」を感じました。

PMSとパニック障害の話だという触れ込みだけチラッと、後はメイン二人のキャスティングだけ知った状態で観ました。序盤は結構違和感というか、なんのこっちゃかわからない、までは行かないんだけど、自分が経験した事のない出来事を見せられているので、ううーん…?演技が上手い下手とかじゃなくて、簡単に言うと「理解できない」。画面が遠いというか、共感から置いて行かれる感じなんですが、これがめちゃくちゃうまく作用していると思った。話が積み上がっていくにつれて、その乖離がシームレスになっていくというか…別に同人化して来るという意味ではないんですが(最後まで自分とは別人格で共感している感じではない)、ああ、なんかわかるような…みたいな感覚になっていくんです。それが凄かった。わからせ方が凄い。

三宅監督は凄いな…どこまで進化していくんだろう。

実は、観る前、というか、評判を見る前までは、この原作者さん「そして、バトンは渡された」の方ですよね…もうあの作品は私は超絶ダメだったので、絶対観ないほうがいい、って思ってました。
だけど!
監督・製作でこうも変わるものなのか…
(別に今の流れに乗ってる訳じゃないんですが、)
活かすも殺すも製作次第。

ベルリンのダイジェストで印象的だったことを少し書いておきますね。
冒頭に書いた私の感想を、そのまま三宅監督が言ってました。
(確か監督だったと思う…萌音ちゃんではなかったよね?間違ってたらごめんなさい!)
(当事者を)理解できるとは思わない、けれど、この映画がそのきっかけになってくれれば、少しでも近づいてくれれば…みたいな感じの内容です。
あと、劇伴が「きみの鳥はうたえる」と同じ方だそうなんですが(Hi'Specさん)、本作は「波(wave)」と「幽霊(ghost)」をテーマに作っていただいたそうです。波は寄せては返すの繰り返しだけれども、同じものは一つとしてない。病気の症状も人それぞれで皆同じではないという意味、幽霊はそこに居るけど居ない(だったかな?ちょっとおぼろげです)と言われていたような…なんかめちゃくちゃわかる!と思いました。

冒頭にクレジットが出ていたと思うんですが、脚本が和田清人さんと監督で、和田清人さんは私結構好きな作品を書かれてたような気がしたのでおおっ!と思いました!(何だったっけ…そうだ「森山中教習所」の方だ!マイベストムービー)

ぶっちゃけ、かなり静かな映画で、ちょっと疲れた状態で観に行ったので一瞬寝落ちしそうになった所はあったんですが(しかもそれがめちゃくちゃ肝のシーンだった気がする、後から考えると…(やっちまった!)カセットテープの所です。でも大体わかった)、ベルリンダイジェスト&後から読んだ記事でプラネタリウムがオリジナルと知り、めちゃくちゃいい感じに変えたんじゃないかなと思った。

演者さんは脇がいろいろとツボすぎた…
まず光石研さんが出てきてテンション上がった!
それから渋川清彦さん。
で、この二人が話すシーンがあるんですが、なんか既視感…
「お盆の弟」!!
最近観たばかりなので思い出してしまった。
(偶然なのか意図的なのか!?)

あと、写真に納まっている弟さん…(声も?)、あれが足立智充さんですか?役名ないのでわからなかったんですが、調べたら三宅唱監督作品に皆勤くらいの勢いで出られてる方でしょうか…!?(ケイコもきみ鳥も出られてた。以下観れてないんですが密使と番人、Playback、やくたたず)
私は「夜を走る」の印象が強い方です(主演です。めっちゃよかったです!)。
(訂正:足立智充さんは写真の方ではなかったです。同僚の方では?というコメントをいただきました。ありがとうございます!)

制作はケイコのスタッフだなと思いながら観てました。編集が大川景子さん、撮影が月永雄太さんです。今回も16mmなんですよね?ザラっと感よかったです。あと、タイトルもありますが夜の街を映すシーンがとても良かったです。ケイコにもありましたが列車(鉄道)は鉄板。

まったくの余談ですが、今、岸井ゆきのちゃん主演のドラマ「お別れホスピタル」を観ていて、そちらの1話となんかちょっと繋がってる感じがしました。三宅唱監督だからって訳じゃないですが(でもそれが頭にあるのは間違いない)、朝じゃなくて、夜を撮りたいんだな…朝が訪れるまでというか。朝が訪れない人も居る。長い長い夜。そんな感じを受けました。英題が「all the long nights」まさに、です。これもベルリンダイジェスト(もしくは取材記事だったかも?)で監督が言われていました。

内容と雰囲気がめちゃくちゃ単館系です。
ローカルのシネコンでも観れたのは主演二人のチカラだと思う…ありがとう。
daruma

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