翼

AIR/エアの翼のレビュー・感想・評価

AIR/エア(2023年製作の映画)
4.6
靴はただの靴よ
息子が履くまでは。

ソニーもデロリス・ジョーダンも双方共、自慢の商品を売ることを超えて歴史に社会に何を成すか、という軸で仕事を捉えていることが最高に熱い。ソニーは大好きなバスケ界と恩義あるNIKE社の為、デロリスは愛する息子の為に最大の選択をした。その結果、NIKE・NBA・シューズ市場・果ては社会まで変革する空前のシューズ、エアジョーダンが誕生する。
金儲けの理を超越して歴史を動かすのはこんな人たちなのだ。

ベンツが付いてくる契約は一年で忘れられるが、名前のついたエアジョーダンは在り続ける。ソニーがジョーダンに可能性を見出したように、デロリスもまたエアジョーダンに可能性を見出し運命共同体となる覚悟を問う素晴らしい一幕。レベニューシェアなんてぶっ飛んだ契約条件を飲めるのはお堅いadidasでも利益主義のconverseでもなく「JUST DO IT」なNIKEだけ。と見て吹っ掛ける母の胆力が凄まじいよ。
キッチンで洗い物の合間の電話越しにこんな痺れる駆け引きをやってのける母デロリスも、そのエピソードに説得力を持たせるヴィオラディビスもマジもんの名優だわ。

NIKEがNBAに罰金を支払い続けながらもエアジョーダンを履かせ続けたエピソードはスポーツ界隈のマーケティング論では外せない名ジャッジのエピソードだが、意外とあっさり終わらせちゃうのはちょっと残念。てかCEO未承認で通したのは史実なのだろうか 笑
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