ナーオー

DASHCAM ダッシュカムのナーオーのレビュー・感想・評価

DASHCAM ダッシュカム(2021年製作の映画)
5.0
POV映画の新たな傑作!!!

ロブ・サヴェッジ監督。
本作と同じくコロナ禍という設定を活かして製作した『ZOOM 見えない参加者』や日本では去年公開の『ブギーマン』など作品数こそはまだ少ないけど、確かな腕前を持つ若手監督。特に『ブギーマン』は巷の評判は決して高いとは言えないけど、個人的には大傑作だと思います。プロットは王道だけど、しっかり怖い演出、それだけではなく、こういうジャンル映画では見落とされがちな、丁寧なドラマ描写や俳優陣の演技… どこを取っても素晴らしいホラー映画でした。

ただ『ブギーマン』はロブ・サヴェッジ監督作としては初のメジャー作品ということもあって、"万人向け"しやすい作りの手堅い作品だったのに対して本作『ダッシュカム』はロブ・サヴェッジ監督の本来の持ち味、その"ハードコア性"が最初から最後までフルスロットル。近年稀に見るくらいぶっ飛んだ映画でした。

まず主人公がめちゃくちゃ斬新。
いわゆる迷惑系YouTuber。おまけに反ワクで反マスク主義のトランプ信者。
とにかくこの主人公の不謹慎極まりない最低最悪な行動にドン引き。舞台がコロナ禍ということもあり、登場人物の多くはマスクを着けている。しかしアニーは反マスク主義者。カフェ店員からマスクの着用をお願いされると、大声で拒否し、店から追い出されるほど店内で大暴れ。店員に対しても罵声罵倒を繰り返す…

こういうやつ日本にも居たよね……
飛行機でマスクの着用を拒否した男居たよね〜 あのキチガイ。居たよね〜 笑

反ワクで反マスク主義ということを置いておいても、人に迷惑をかけることが生き甲斐。自己中心的過ぎるこの主人公に感情移入することは絶対に無理…… 海外レビューでもホラー演出などは褒められているけど、この主人公像に対しての酷評は凄い笑 "映画開始5分で惨たらしく死ねば良かった…"とまで言われている笑

普通の映画ならこの主人公はこれまでの最低な行いに最後には改心するかも知れませんが、本作はそうはならない。最初から最後まで最低最悪。最後の最後までクソッタレのまま。映画冒頭、コロナ禍のアメリカでの生活に嫌気がさして、イギリスへと行くわけですが、この時点で
ペットの猫を置き去りにしている… この時点でアニーの自己中心的さがもう現れてる…

マスクの着用を拒否して店内で大暴れ、友人の車を勝手に盗む、最低の行動の数々。けど自分が悪いなんて微塵も思っていない。異常にポジティブ… というよりもほとんどソシオパスです。完全に狂気の領域に行っており、ここまで来ると一周回って応援してしまうほどこの主人公に不思議と引き込まれていく。ちなみに主人公アニー演じるのはまさかのアニー・ハーディ本人役。実際は迷惑YouTuberではなく、インディーロック バンドの歌手だそうですが、本人役ということもあってどこまでが本物でどこからが作り物なのかが分からなくなってくる。

ちなみアニーの動画。最初の頃の視聴者数は100人前後。わざわざアニーの配信を見ているだけある筋金入りの"100人"。基本的にはアニーと同じような反ワクで反マスクの人たち。そのうち2割くらいは変態… しかし映画が進むにつれて視聴者数が次第に増えていき、最終的には数千人が視聴しているというところが地味にリアルでした。

POV映画としては王道だけど、しっかり怖いし、びっくりさせられるジャンプスケアなどの恐怖演出も非常に楽しい。

なによりも伏線回収もお見事。
怖いけど笑ってしまう…

あとは斬新過ぎるエンドロール…
こんなエンドロールは未だかつて見たことない!わざわざアニー・ハーディが本人役として出演しているだけある… まぁ確かにちょっと長い気もしたけど…

好き嫌いは分かれるは当然の映画だと思いますが、個人的には『ブギーマン』を超えてロブ・サヴェッジの最高傑作というかブラムハウスの最高傑作です!
ナーオー

ナーオー