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幸運を!のcyphのレビュー・感想・評価

幸運を!(1935年製作の映画)
4.6
これも超〜〜好きだった ギトリが初めて映画用に書いた脚本にして、当時新婚ほやほやのジャクリーヌ・ドリュバックと映画撮影と銘打ってクルー付きで新婚旅行してるだけじゃ?という多幸感溢れる「新婚旅行(仮)」映画 この 「(仮)」ってところがミソで、正確に言うと「一目惚れし合ったギトリとドリュバックが宝くじの山分けをきっかけにいい感じになるかと思いきや勘違いと嫉妬のためドリュバックが秒でほかの男と婚約してしまうもギトリのことは依然ラブなのでギトリの虫のいい口車にあえて乗って婚約者が兵役から帰ってくる1週間を使って宝くじで当たった大金を使い倒す旅行に繰り出すことに〜という新婚旅行ならぬ婚前NTR旅行」なんだ 恋愛の最小単位は3人、という掟に忠実ななんとも堂々とした癖(へき)映画であることよ

ギトリの「幸運を!(Bonne chance!)」って声かけのおかげってドリュバックが信じこんでるとはいえ言うたらばひとのお金を湯水のように使って美しいジュエリーをナプキンの裏に忍ばせて贈ったりいい車買って迎えに来たり故郷の村に寄付しておいて楽団つきの出迎えを用意したりと華麗なモテムーブを繰り返す貧乏画家のギトリもドンピシャにぐっっとくるし、それに無邪気に喜ぶドリュバックの外斜視気味の目線の夢心地なことと言ったら 映画を撮ること自体への浮つきと映画ロケと銘打って新婚旅行してる喜びとが相まってなんてことないシーンも無性に幸福に見えてくる 『女は女である』とおなじ、衒いもないラブの目線に胸を締め付ける多幸感とそれに比例する切なさよ

しまいには書類上とはいえ近親相姦的な会話さえ出てくるんだからたまらない 「キミを養子にとる決意をしたというのにわたしは娘となんてことを!」 ギトリはずーっと歳の差恋愛に皮肉っぽく言及してるのも自虐的なナルシシズムで好きだな 迷えるたましいのファザコンなわれわれをあっけらかんと救済するチャーミングなウィンク そして右往左往もなんのそのの絶対的力技ハッピーエンド お城に向かって高級車を走らせ去っていくふたりの後ろ姿にとびきりのBonne chance!

p.s. とらんぷ譚の習作かのごとく、今回もモナコのカジノで有り金溶かしちゃうくだりが出てきてラブだった 弟夫婦とばったり会っちゃうくだりもウケた ずっと家系図に恋愛を持ちこんで混乱させるギャグをやっているのいい
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