イベリー子豚

逃げきれた夢のイベリー子豚のレビュー・感想・評価

逃げきれた夢(2023年製作の映画)
4.7
「【光石研】ファンによる」
「日本映画ファンのための」
「歴代最高の【光石研】ドキュメント映画」
「俳優兼業だからこそ撮れる演出」
「北九州ガチ勢」
「これこそ、大日本人の『生きる』」
「『教頭という男』」
「《気持ち悪すぎなんやけど…どしたん?死ぬの?》」
「《しゃーしー。お前は本当に昔から自分勝手やの!》」
「《なんか……めっちゃ喋るねお父さん》」
「《あんたってこんな人やっけ?》」
「《先生の人生にアタシ、関係ないもんね》」
「エンドロールまではノーミュージック!
細部まで冴え渡る心遣い!!」





こんなに自然で脱力しきってて
なおかつ役者として魂と情熱を感じる映画を
観られる幸せ。


【ビル・ナイ】には
一切、感情移入出来なかった(こともないけども!!)
イベ子の琴線が震えまくり。


そう、日本のお父さんはこれなんですよ。

働いて、働いて、家族に疎まれて
ちょっと浮気して、働いて、働いて……。


でも若者との距離感はとれるし
仕事でもちゃんと信用されている。

全然、「老害」なんかじゃない。

喫煙もサボりも問題なさげなら
注意しても追及はしない。

学校にいたら普通に人気ありそうな「先生」。


そして「変わらない環境」と「自分の変化」。

上手すぎる。

方言もそうだけど
地元、本人パパ、気心知れた共演者。


リラックスしきってるのに
「俳優【光石研】の人生の全てが詰まってる」
かのようなアツくて重厚なヘラヘラ愛想笑い。


鬼のような「長回し」の中でも
クライマックス直前の
「俺、学校やめるってよ」シーンは圧巻。

講談……トークショー……いや独演会?

とにかく喋る。

ボケてセルフでツッコんで
泣いて、怒って
嘆いて、納得して……とにかく喋りたおす。


『だが、情熱はある』なの?すごいね。


ザ・ノンフィクションで会話劇で中年の危機。

渾身の「あて書き」に全身で応える。

2023年の【光石研】はエゲツないですわ。


もちろん、他のキャストも全員ハマりまくり。

他の役者じゃ
この映画は多分、作れなかったんだろなぁ……
当たり前か。


そして
フィルムの質感にスクエアサイズのゴリゴリ演出。

カット割からBGMレスまで
センスのツボが同世代だからか、イベ子の好みすぎ。


俳優としても異彩を放っているけど
今後の監督作も楽しみでなりませんね。