このレビューはネタバレを含みます
偶然本作の存在を知り鑑賞。
インパクトのある廃墟(ではない)、陶器人形のような少し不気味な瞳の主人公、往年のJホラーのような暗さに、ファンタジックで非現実的な世界観。見る前から凄くポテンシャルがあった。
内容は予想よりも本格的だった。アニメーションだけでなく、鑑賞者を怖がらせる音響も巧かった。また、ステディカムや手持ち風の表現など、3Dと2Dの上手なミックスによって、実写を意識したカメラワークが丁寧に表現されていた。
1時間強の作品だが、意味ありげな要素の散りばめ方に偏りがなく、楽しむことができた。虫、幻覚、幽霊、ゾンビ、人体実験、ディストピア等、古今東西のホラーアイコンが次々と現れては消え、飽きさせない工夫がなされている。
演出も丁寧な場面が多かった。突然ある運転手の視界がインサートされたかと思えば、幽霊にハンドルを操作され、主人公のいるビルに車が突っ込む場面などは、予想を超えてきた体感があり、良かった。不気味さを煽り、ショックを与える工夫をさまざまに凝らしていた。
ただ、終盤の展開はどう考えてもキャラクターが脚本上の都合またはやりたい場面優先で殺されたり、突然現れたりした印象が強く、それまで敷き詰めた要素を投げ出した感触があった。山場を作りながらもじわじわと情報を出しつつ進み、良い流れで来ていただけに、残念だった。
『アムリタの饗宴』および監督の次回作に期待したい。