開明獣

さらば、わが愛/覇王別姫 4Kの開明獣のレビュー・感想・評価

5.0
ロシアがウクラナイナにしてることを、昔、日本は中国にした。その中国は、今、そのロシアを支持し、北朝鮮を支援している。虐げられたものが、嬲るものへ。人は歴史を伝えいくも、その本分を忘れ、過ちを幾度もおかしていく。永劫に続くものはないことを、まざまざと示している中華の歴史。奢れるものは滅びるという必定の運命から学んだ為政者はいまだいないのではないだろうか。

今から2,200年以上も前に秦を滅ぼし覇王となった西楚の項羽。栄華は長く続くことなく、漢の高祖となる劉邦にやぶれる。勇猛果敢で知略にも優れた項羽だったが、連戦連敗の劉邦に最後に敗れ去る。人心掌握術に長けた劉邦の勝利は、個の力よりも集の力の時代への移り変わりを象徴するものだった。四面楚歌の有名な故事の起こりとなった最後の決戦で、愛姫、虞美人とのやりとりを劇にしたのが、「覇王別姫」で京劇の傑作とされている。

その「覇王別姫」を演ずる京劇の役者2人。一人は女形。項羽役の役者と夫婦となる娼婦。激動の時代に翻弄される3人の男女を描いた本作は劇場で観てこその傑作。

3時間があっという間だった。時にぞくりと鳥肌の立つような映像美はとにもかくにも見事。他、多くのフォロワーさんが軒並み高評価なのは伊達ではなかった。信じて劇場に赴いた自分を誇りたい。多くを語るに及ばず。というより、開明獣の稚拙な語彙力では、ただただ作品を穢してしまうことを恐れる。刮目してご覧あれ、としか言いようがない。

ライフタイムベストの20、いや10にも入る作品にここで出会えたのは喜ばしいことだ。

50年もののアルマニャックのような永い余韻に酔い痴れる至福の時は、上質な作品とでしか味わえない何よりの歓喜。映画を観た、と心の底から言える作品だった。
開明獣

開明獣