ゆりこ

ミッシングのゆりこのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
3.9
完成披露試写会にて鑑賞。
愛する娘が失踪し懸命な捜索を続ける沙織里が、マスメディアやSNSの溢れる情報に翻弄され、徐々に平常心を失っていく。

予告の時点ではただのお涙頂戴系の辛いだけの作品かと勝手に思ってた。確かに全体的に重いし、“心を失う”とは言いつつも何かに縋りたくなる人間臭さがある分観てる側の心は痛かったけど、どちらかというと沢山考えさせられた社会派ドラマだった。

特に全体を通して“報道とは”を問う内容だったと思う。TVを通じて真実を世に伝えたい、そして誤解が生じないように慎重に言葉や撮り方を選ばないといけない。一方で視聴率が取れないといけないから、視聴者が期待するストーリー性とかオチとかを演出したり誇張したりして、結果事実と違うニュアンスで世間に伝わる。TVってなんなんだろうって言葉が1番考えさせられた。その当事者の砂田、翻弄される沙織里、客観的に見てる豊の構図が絶妙だった。
そして吉田監督が「世の中が少しでも優しくなるように」と願いを込めた本作。劇中の、誹謗中傷が招く事態を観て心が痛くなる人は多いはずなのに、無くならないのは何でなんだろう?TVと違ってネットは気軽に発信出来るし無意識のうちに人を傷付ける人もいるんだろうな。重いから万人に勧めるわけじゃないけど、この作品を通じて1人でも多く気が付ける人が増えれば良いな。

作品に余計な要素がなくて純粋に考えに浸れたのが良かったし、苦しいけど好きと思えるシーンも幾つかあった。そして終わり方が変にドラマティックな展開じゃないのが結構好き。この作品はこれで良い。
石原さとみさん、これは賞レースに名前上がってくるのでは?複雑な心境だっただろうあるシーンの涙が忘れられない。
ゆりこ

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