ゆりこ

オッペンハイマーのゆりこのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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第二次世界大戦下、世界初の原子爆弾の開発に成功し“原爆の父”と呼ばれた物理学者オッペンハイマーの伝記映画。原爆の開発の様子と、その後ソ連のスパイ疑惑をかけられた彼の取調べの様子が並行して描かれる。
あの広島・長崎の惨劇を招いた原爆の開発者の話なんて少なくとも日本人でよく思わない人はいて、それでも世界で称賛され賞を総なめなんて、そりゃどんだけどんだけ良いのか観てやろうよと思って観に行った。
まず、自分からチケット買って観に行ったくせに、どんな気持ちで観ていいか分からなかった。史実を知るモチベーションで観ればいいのか、エンタメ作品として楽しめばいいのか。特に原爆投下地を決めるシーンはほんの僅かなシーンだったけどすごく辛かったし、8月6日のシーンも苦しかった。
でもその後の聴聞会の様子を見て、少し考えが変わった。あそこでのやり取りとか実際の言った言わないについては、脚色もあるだろうから偏った理解はしちゃいけないなと思う。けど“技術”と“政治”は切り分けないといけないなんて当たり前のことが分からなくなる、そんな戦争とかプライドって本当に人を狂わせるし、そのせいで沢山の無意味な犠牲が出てるのは事実。今ではこんな風に映画になってて観た人もおかしいって思ってる時代なのに、まだ戦争や核兵器が無くならないのも事実。こう考えると、攻めたエンタメ作品として評価されたいということではなく、オッペンハイマーへの同情や賞賛を促したい作品というわけでもなく、とんでもない覚悟で兵器そのものや戦争や未来の技術について問題提起してる作品として飲み込めた。
この作品が褒められることにモヤモヤしてたし、実際観てて苦しいシーンも沢山あったけど、いっぱい考えたら何だか少しでも歩み寄れた気がして、鑑賞後はちょっとスッキリした。正直すごい長かったけど、すこしでも向き合う勇気がある人には観てほしい。
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