じぇいらふ

花腐しのじぇいらふのレビュー・感想・評価

花腐し(2023年製作の映画)
4.8
『福田村事件』の脚本陣の一人、荒井晴彦の監督最新作。監督としてより脚本家としての方がずっと有名な方ですが、前作『火口のふたり』が良かったので映画監督としても注目。
これは、、、すごくよかった👍👍👍👍ギリ地方のラスト上映に間に合って観てよかった。間違いなく荒井監督作品の最高傑作であり、今年の映画のベストの1本ですわ。
原作は松浦寿輝の芥川賞受賞作品。。。の様ですが、いつも通り原作は読まずに映画鑑賞主義🤣

📖長年撮れないピンク映画監督である栩谷は、アパートの大家から、取り壊しをしたいのに変な男に居座られて困っているので、アパート代減額と引き換えに立ち退かせる様、頼まれる。行ってみると、、、伊関と名乗るその男は実はAVの脚本家で、立ち退かせるつもりが意気投合して飲み🍻語り合ってしまう。二人はどうやら、、、時期は違うが、祥子という共通の彼女と付き合っていた過去があきらかになる。。。というおはなし

ユニークなのは現代のシーンは白黒で、過去の回想としてのシーンがカラーになっている。「思い出は~モノクローム🎵」という大瀧詠一の有名な歌のフレーズを大家:マキタ・スポーツが歌ってる笑。その逆なのね。思い出こそフルカラーの世界。または、、、セックスシーンのみカラーになった、昔のパートカラーピンク映画のオマージュ?

キャストがまず最高ですね。栩谷:綾野剛は、あまりにあちこちで観る俳優なので正直食傷気味なのだが、、、この作品の綾野剛はいい。ボソボソと絶妙に語る、体温低め。年齢も不詳(多分結構年齢高めの設定ぽい)映画も撮れず、恋人も亡くし、住むところもないどうにも詰んだ男。こんなに良い役者だったのか!と改めて関心。
相手の男伊関:柄本佑は『火口のふたり』に続けて主演。安定のひょうひょう男感。謎めいてて、、、やっぱり後半色々ヤバイことがわかる🍄
そして、、、思い出にしか出てこない女、祥子:さとうほなみ!『愛なのに』ですっかりお気に入り女優さん。女優としては大成しないが、二人の男には忘れられない「いい女」を納得の存在感で演じてる。今回、荒井晴彦作品なので、、、濡れ場ありありですが、やっぱりいいです🥰。ゲス~のドラマーなんですよね。音楽の方では全然注目してなかった笑。間違いなく注目すべき女優さんです。

基本この3人で、、、あの女は良かったなあと語るダメな男2人の映画です🤣

やっぱり荒井作品は会話がいいです。『火口のふたり』でもそうですが、なんか生々しさがあっていいですよね。多分語り口とかは、今どきの若者とは違うんだけど、間違いなく若さがある不思議な会話劇。基本祥子との思い出話で大きな事件が起きるわけではないのだが、ずっと飽きずに聞いていられる。ここら辺脚本家としての面目躍如。ジャームッシュの映画みたい。

あと荒井作品はやたら食事シーンが出てきますが、今回もあれこれ食べる飲む。食べる喋るは生きるということ。山崎ハコの曲が流れる、山崎ハコがママをやってる韓国スナック(って凄いお店笑)の酒の飲み方が面白い。ああやってキュウリ食べるのねとか。

そして、、、やっぱり男と女だから寝る、まぐわう濡れ場シーン相変わらず満載。不思議なのは、主演のセックスシーンはそんなに長くないのに、後半、伊関の部屋の女性達との不思議な絡みのシーンがやたら長い笑。現代なので白黒。これは今やたら濡れ場シーンを観たがらなさすぎる映画ファンへの当てつけか😆?荒井作品の濡れ場シーンって多いけど、結構客観的というか、あまりエッチでもないですよね。『愛なのに』の城定監督のエロエロと比較するとずっとクール。色気があるのは男二人の方だったり、、、女性は好きだけどそこまで入れ込まないのかしら?不思議な距離感。だから映画作家によって濡れ場シーンもテイストって違いますよね。

好きなシーンは多いですが、やっぱりラストのパソコンから鏡と○○の不思議なシーンは、、、控えめに言って最高です。震えた。
最近の映画であのゆっくりした時間の緊張感は、しばらく観たことないです。ダニエル・シュミットですか?!。あの会話劇からこの展開は予想外。映画!としか言いようのない瞬間!

あと最後のカラオケのあれは、、、ずるい笑。あれは気持ちよく終われてしまうがな🤣🎤