さよこ

こいびとのみつけかたのさよこのレビュー・感想・評価

こいびとのみつけかた(2023年製作の映画)
4.0
【縮まらない距離感の居心地の良さ】
前回目黒シネマに行ったときに予告が流れて気になり鑑賞。同監督作品の2本上映。とても良かった。

🍂全体の感想
ありふれた言葉になるけど「他人に理解されなくてもこの世に一人だけ分かってくれる人がいれば良い」を体現しているようの二人の空気感がとても良くて幸せな気持ちになれた。ほんとはその"1人"に出会えるだねでも奇跡なんだけどね。なのに後半からの展開がえげつなくて、そんな…そんなやっと幸せになれたのに…と心が抉られた。

🍂好きな台詞
『嬉しいよって言ってもらえて嬉しいよ』

🍂運命
主人公にとって彼女は唯一無二の存在で、もう一生に一度の出会いだったと思う。そういう出会いはマイノリティのそれともかなり近しいことのように思える。だから縁が続くならどんなカタチでも良いんだって少し歪な関係構築になるんじゃないかな。彼にとってはたった1人の出会いだもんね。切ないね。

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⚠️この先、ネタバレあります⚠️
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🍂無防備な主人公
彼女に嫌われたくないんだと言いながらも、主人公はとても無防備で、見栄を張ったり格好つけるという発想が全くゼロなのが良かった。ありのままの自分を見せ過ぎてて赤ちゃんみたい。

🍂縮まらない距離
ネグレストされて育ったからか、主人公は自分や他人を深く知りたい・知ってほしいと思う欲求がとても低いように思えた。だから話題は「内面(主人公や彼女)」ではなく「情報(社会やニュース)」で、どんなに会話を重ねてもお互いのことを知るための情報は全然増えなくて、愛情と距離のアンバランスさがとても稀有な描かれ方をしていた。

🍂優しい理由
自分は恋愛とかよく分らないけど、彼女が主人公を受け入れているのは「一緒に暮らす将来」を想定していないからだと思った。自分が現実逃避したい気分のときにちょうど浮世離れした男性が現れて、都合良く自分の過去や内面のことを話さずにコミュニケーションが成り立つ相手がたまたま主人公だっただけで。だからホームレスでも気にしないし、他人の家に窓ガラス割って侵入してきても受け流せたんだと思う。だってこの先ずっと一緒にいるなんて思ってないんだもん。細かいことはどうだっていいよね。主人公の純粋な気持ちを返して欲しい。哀しい。

🍂その他、色々
・大人になってもオタサーの姫から卒業できないまま、アラサーの姫になった感じが痛かった…
・誕生日プレゼントの曲が"あなたは一人ぼっち"とか"このくだらない世界で"とか全然楽しくない歌詞だったのが不思議ちゃん通り越しててえぐい。歌詞の全体を見たらきっと良い曲なんだろうけどハッピーな言葉をチョイスして欲しかったなぁ…けどそういうところが一般人とのズレであって二人の間では成立するところなんだろうな。
・それぞれ「変わり者」と揶揄されてるけど、実は片方は結婚してて優しい旦那さんがいてマイホームがあって全然二人は似た者同士ではないんだよね。同じ土俵にすらいないっていうか。とんだ食わせ者だなって思った。でも彼にとってはそれでも心の支えにはなっただろうから嘘って難しいね。
・理解ある旦那さんすぎて良心の呵責が凄そう
・不審者をクルマの後ろに乗せるの怖すぎる
・殺意をいつでも取り出せる場所に持ってる人と分かってやべー男を引っ掛けちゃったぞ、とか思ったかな。
・本命とセカンドの手料理の格差がえぐい
・主人公からのアンサーソングで"ただいま、おかえり"が嫌味にならないのがすごい。そういう意地悪を言わないキャラクターだから歌える曲。

🍂二人の距離感
他人に触れられたくない話題の地雷が多い人ほど、他人への地雷に敏感だし、これ聞いちゃまずいかなと遠慮し合って結局当たり障りのない会話になっちゃうよね。自分のことも相手のことも興味ない人ほど居心地が良いのは凄く良く分かる。
さよこ

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