ジョニーJoe

パトリシア・ハイスミスに恋してのジョニーJoeのレビュー・感想・評価

4.3
最初から最後まで目が離せず。

ドキュメンタリーなのに、語り口が “映画的”。
彼女の小説を原作とした映画化シーンの数々も、現在の縁の地で撮影されたスローモーション映像も(特にロデオ場面は意味深)、途切れ途切れに不安定に回転数が変わるバックのエレキギター曲も、すべて彼女の人生の暗喩。

本人の言葉は もちろん、過去のパートナー女性たちの話(本作のために顔出しインタビューしてて、何人かは その後 死去。とても貴重)も至言ばかり。時代も境遇もセクシュアリティも 自分とは まるで違うのに、どの言葉も胸に刺さった。ありありと生身感・現実感が伝わり、“自分からは遠い、才能に恵まれた人の話” と片付けられない魅力がある。

それにしても、ハイスミスと付き合ってた女性たちは、何で こうも目が離せないんだろう。
(今では かなりの歳のはずだが)どの人も凛としてて、穏やかながら生気に満ちてた。
ハイスミス自身を含め、こういった存在同士の強烈なケミストリーがあったからこそ、数々の著名映画作家のクリエイティビティを刺激して作品を撮らせるような、独特のストーリーテリングが出来たであろうことを実感。

近年公開になったハイスミス個人の秘密日記からの独白。その語り声に(『ゲーム・オブ・スローンズ』で有名な)グウェンドリン・クリスティーを抜擢したのは、最高の人選。ハイスミス本人のキャラクターやアイデンティティを体現しているかのようで、秀逸だった。

本作を観たら、もう『キャロル』も同じ映画には見えないはず。

そして、何気にネコ映画。

=====

特別試写会アフタートーク。
翻訳家の柿沼瑛子さん(小説版「キャロル」など)と、コラムニストの山崎まどかさん。

お2人の話が興味深すぎて感嘆。
笑える ぶっちゃけ話を交えつつも、本作の多層な側面や多面性、いま観る意義など、ハイスミスについて ほとんど何も知らない僕にとっても、観る度に深まるであろう気づきの要素や背景の話題が、短時間のトーク内に満載。

そして何より、ハイスミス本人と映画『キャロル』脚本家との逸話(若くして生前交流があった)は神掛かってる。

↓配給会社さんによる、このトークのオフィシャルレポート(当日の会話が全部 文字起こしされてて、読み応えアリ)
https://note.com/mimosafilms/n/n37f9a512a8b9