椿本力三郎

キリエのうたの椿本力三郎のレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
2.0
これまでの岩井俊二の作品を
どのように受け取ってきたかが問われる作品だと思う。

まず、本作単体で見たときは総合的に優れた作品である。
特に音楽が素晴らしい。

しかし、ずっと岩井俊二の作品をフォローしてきた人間からすると
「おいおい、またかよ」と思わされるシーンが多すぎる。
自分の過去の作品に対してオマージュを捧げ始めたのか、と
岩井俊二の感性の枯渇を感じ、悲しい気持ちになった。

アイナ・ジ・エンドについては、
「PiCNiC」「スワロウテイル」のCHARAそのものやんか、と。
その歌声も含めモノマネさせられているのかと思った。
アイナ自身にその自覚があるのか不明なるも
「監督が理想とする、実在の別人女性」を強制される彼女が気の毒になってきた。
また、広瀬すずに女子高生の役をやらせるのは
そろそろパワハラではないだろうか?

まあ、映画監督というのはそういうものなのかもしれない。
「ラストレター」で私の周りの多くのファンが離脱したが、
私も本作で岩井俊二から卒業しそうになっている。
過去の勝ちパターンを繰り返しているだけであり、
そこに世界観の深まりは見られず、「らしさ」の現れというポジティブな評価はできない。
ここまで辛辣に書くくらい、私は岩井俊二の作品が好きだったということかもしれないね(過去形として)
これからは濱口竜介や今泉力也の作品にかつて私が求めた「岩井俊二的なもの」を見出していくつもりだ。