ヴェンダースの優しさが木洩れ日となって降り注ぐような映画だった。役所広司さんの名演は言わずもがな。役所さんが演じる平山さんはとても無口。でも彼なりのやり方で、ささやかだけどとても豊かに人と関わっている。泯さんのダンスは見える人にはちゃんと見える。わたしは、照明にもしてやられた。紫色の部屋。平山さんの寝ている部屋のその奥(窓の向こう)は深い碧。東京の夜のライト。平山さんの車の中。ほっぺたにキスされたらちょっと赤くなる。無口だけどとても豊穣な照明。市井に生くる人々を優しく包み込む。
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慎ましく生きることの豊かさ。そうすることで見えてくるもの。必要最小限の台詞が、ジャストタイミングで出てくる僥倖。無駄をそぎ落としている(1カ所だけ、台詞で余計と思ったところがあったのはきっとわたしの気にしすぎ)。俳句とか短歌とか、そういった世界とも通底しているのかもしれない。読書好きにはうれしい設定(早速図書館にある2冊予約ポチってしました)。カセットテープ愛好者にもたまらない設定。そして玄人好みのキャスティング(おそらくは)
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・ヴェンダースのドキュメンタリー映画『東京画』も思い出した。
・なぜか、松居大悟監督は秒でわかったw
・家屋内の急な階段もいい。スクリーンの横幅でいうと、階段:部屋=1:3くらいかな。その配分がいいと思う。なーんて
【追記】2024年1月上旬
図書館で借りて読んだ本は以下の2冊です
①『11の物語』パトリシア・ハイスミス/訳:小倉多加志(ハヤカワミステリ文庫)
②『木』 幸田文 (新潮文庫)