東京の下町にひとりで暮らす、都心の公衆トイレ清掃の寡黙なおじさんの生活の話。
前半の丁寧な生活の描写と繊細な情緒が美しくてかなり好きだったけど、後半のセリフのクサさが気になってしまった。
床が軋むほどに古いアパートで目覚めて支度をして、トイレを掃除して昼食は神社のベンチでサンドイッチ、また掃除して、帰宅したら銭湯に行って行きつけの居酒屋に寄って帰る。っていう繰り返される日常が丁寧に丁寧に描写されてた。まるで本当の人間の生活を隠し撮りしてるかのように。
彼が清掃しているのは、多種多様な人間が誰でも使っている都心の公衆トイレで、まさに東京のカオスを体現しているような空間に思えた。
そんな都会のカオスや喧騒の中で、自分のペースで淡々と、孤独に作業をし続けながら、変わらない日常の中で何気ない幸せを見つけては微笑むような生活があまりに素敵。
度々映される下町から都心に車で向かうときの東京の景色、そのときの音楽が最高に好きだった。映像のフィルムのレトロ感も70-80'sの曲選も何もかも最高。
こんな感じで前半の情緒がすごく好きで、自分の中でもお気に入り具合もかなり稀有なものだったものの、映画後半、セリフのクサさがどうしても気になってしまった。
外国人監督の日本語映画を日本人が見ているからであろうな、という違和感だったけど、今回の繊細な描写が美しい映画においてはリアルなセリフってかなり大事な要素だと思うので、どうしても突っかかってしまった。
「この世界は、本当はたくさんの世界がある...」的なところも、なんか急に作品で監督が伝えたかった話を登場人物に言わせてる感を感じてしまったり。これはほんとに日本人的日本語感覚だろうけど、日常会話でさらっとこんな切り出し方することないよ、みたいな。英語の構造的だなとも思った。
