滝井椎野

PERFECT DAYSの滝井椎野のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
深く沁み入る良い映画に出会った。
観終えた後は自身の過ごす毎日が少しだけ好きになれた。

繰り返される主人公平山のルーティンと、それを彩るちょっとした変化によるキャラクター自身の変化が実に愛おしい。
平山のルーティンが繰り返される構成の本作。とにかくこの平山という男が無口で何を考えているのか分からない。ところが、日々を繰り返す毎に少しずつその内面に触れていき、最後にはこちらの意識もシンクロしていく。
ポイントは、姪という分かり易い観客の代弁者の登場によって平山が自身の内面を言葉にしてくれるようになった辺り。このおかげで一気に作品が理解できるようになる。

人はそれぞれ自分の世界を持っており、彼はそれを受け入れ守り生きている。
それでも決して同じ毎日が続いている訳ではなく、人と出会う度に、ちょっとした幸福を見付けるたびに、それが重なり濃くなっていく。変わらない訳が無いと影踏みのシーンで平山が吐き出す。
その心の底からの言葉が、ラストの彼の表情と登るお日様をこれ以上ない程に感動的なものにしている。

終始役所広司の名演技に脱帽しっぱなしの名作だったと思う。
私も新たな年、木漏れ日のようにすべてが違う毎日を大切に生きていこうと思えた。
滝井椎野

滝井椎野