このレビューはネタバレを含みます
世にも奇妙な誕生と冒険の中で成長していく主人公ベラが愛おしい。
哀れなるものは果たして誰だったのか……観た人間の数だけ解釈が広がりそうな作品だった。
本作、ベラの成長を旅を通して描いているわけであるが、あくまで私個人の考えとして果たしてこれは成長なのか……はたまたベラにとっては退化であったのか？ というのを感じた。
というのも、本作のタイトルである『哀れなるもの』というのが何を指しているのかを考える。これがいずれの視点でみるかによって180度違ってみえるのではないかと思うのである。
我々のごく一般的な視線でみれば、奇妙な生い立ちで成人女性の身体でありながら幼児のような未熟な中身を持つベラこそが『哀れなるもの』であり、旅を通して思考が成熟し見た目と乖離のない精神を獲得する、いわゆる成長をするというストーリーである。
だが異なる視点でみたとき、ベラの純真無垢な精神に翻弄され、惹き付けられ、滅ぼされてしまうダンカンのような男やDr.ゴッド達ベラを取り巻く人間たちこそが『哀れなるもの』であるように解釈できる。
そうであるならば、純粋な精神を持つベラが人間の醜さや世界の不条理に染まり、自我の確立といえば聞こえが良いが、その『哀れなるもの』たちと同じ存在に近づいていくのは果たして成長なのか……等と考えてしまった。
デートムービー等には確実に向かない本作、間違いなく色々と考えさせられる名作であった。
