じぇいらふ

PERFECT DAYSのじぇいらふのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
役所広司がカンヌで主演男優賞受賞して話題になった作品。東京渋谷が舞台、オール日本人キャスト。ヴィム・ヴェンダースが撮る日本映画。最近過去作を連続して観ましたが90年代までで、最近のはあまり観て無く、『世界の果ての鼓動』がつまんなかったため😅正直どうなんだろ?と思ってたら。。。びっくりした、すばらしい!!大傑作!!!ここに来て2023年ベスト作品が確定しましたレベル。しかもこんなに観客が入っているヴェンダース作品って『ベルリン・天使の詩』以来?いや過去最高レベルじゃないかしら👍👍👍👍👍

🎞️早朝 掃除の箒の音で目覚める 布団をたたむ 歯を磨く、、、身支度をする 必要なモノは全て用意されている 仕事に出発する 車のカセットデッキで音楽を掛ける 今日はアニマルズの”朝日のあたる家”🎵~はじまり

📖平山は一人暮らしで東京渋谷区のトイレ清掃員をしている。毎日決まったルーティーンを繰り返している。好きな音楽を聴き、本を読み、気に入った木陰の写真を撮るなど、質素だが充実した毎日だ。そんな彼の元に姪っ子がやって来る。。。というおはなし

役所広司が圧倒的にすばらしくて、ほぼほぼ彼を観る映画。セリフがほとんどなく、彼の生活の様、仕草、表情を見続ける。『素晴らしき世界』の激しい演技もよかったが、今作の徹底した静かで押さえつつも豊か過ぎる演技ぶりにただただ感動。もうカンヌ獲ってるけど、もっといけるでしょうレベル。彼の最高作の一つですね。

キャスト陣がすごい豪華。柄本時生とか田中泯とか、最近いい映画に出てる人押さえただけじゃなく、なんとスナックのママが石川さゆりで、時々唄ってくれる。ギターがあがた森魚って笑贅沢すぎ。この時の日本訳詞版”朝日があたる家”はすばらしくて、紅白これ唄ってよとか思った笑。姪っ子が新人さんなのがびっくり。すごく良かった。三浦友和もよかった。さがせばびっくりする人があちこちに出てるみたい。

外国人が撮る日本映画ってどんな作品でも結構好きで、やはり同じ身近な世界を撮っていても日本人とは視点も取り方も違う。そこが興味深い。
ヴェンダースは『東京画』『夢の涯てまでも』で日本東京を撮っていて、その時はパチンコ屋が出てきたり、サウナが出てきたりと、いかにも外国人が撮りたそうなめずらしい日本独自な文化を撮っていたが、さすがに今回は、平山の古いアパートを中心に身近な下町の東京を撮っている。より日本映画っぽい。

今回の企画自体が渋谷のデザイントイレの広報から始まったらしく、東京渋谷のいろんなおしゃれんトイレが観られる。まあここら辺、トイレ綺麗過ぎじゃね?とか批判されますが、そういうのは今回のドラマの中心ではないだろうから気にはならない。汚い時もあるでしょうよ。

ドラマは基本平山の生活のルーティーンをひたすら繰り返す展開で、毎日毎日決まったパターンをただ繰り返して観るだけで、特に大きなドラマ展開はなく、他の登場人物の絡みは多少あるもののほとんど無口な平山の様子を眺めるだけの映画。これが全然飽きない。車を運転しながら、好きな音楽をかけて、仕事に従事する人物を観て楽しむのは『さすらい』とかのまぎれもなくヴェンダース作品。嬉しくなる。

平山が良い趣味してる感満載で、60~70年代あたりの古いロックをカセットテープで聞く、フィルムカメラで風景を撮るとか、古いアナログ人間というより一週回っておしゃれ過ぎですわ笑。思わず若い女の子とも共感しあったりする。同僚のタカシとのカセットテープをめぐるドタバタとか、最近のレコードカセットテープ復権の世情を反映していて、なんかヴェンダース今風の映画撮ってるぞ感に、ほほえましくなる。

そんなまさに完璧な毎日=PERFECTDAYSがちょっとしたことで少しずつ揺らぐ後半のドラマ展開。平山の背景がちょっとずつわかっていく。。。ドラマ展開がないって言ったけど、静かな展開に時折でてくる綻びと、押さえた感情がある時ふと発露される瞬間が正にドラマチック、ドラマなんですよね。

こういうタイプの映画って日本映画でさんざ撮られている気がするけど、こういう風な作品になかなかならないよね。日本人に撮れない日本映画。やっぱり違いますね。
ところどころ敬愛する小津作品のオマージュもよい。日本人だと身近すぎてこういう描き方できないんかもなあ。もっとドロドロしたくなるよね。
ちょっと2024年跨いで、これ超える作品でてくるかなあ位な傑作です。ヴェンダースでも、さすらい、パリテキサス、天使、PERFECTDAYSですな。🚽📼