このレビューはネタバレを含みます
ずっと甘泣きしながら見ていた。
今年の映画館1本目。見終わって、今年の一位はこれだなと思った。
ストーリーらしきものがあるわけではない。ただ「平山」という男を描いただけの映画。それがこんなに感動するとは。
いまこの瞬間に集中する。瞑想映画だった。
無理なんだけど、こうなりたいと思った。
スマホもテレビもない。
でも、朝起きて、口ひげを整える。ふとんをたたんで、仕事に出かける。質素で丁寧な暮らし。
部屋を出て、まず空を見上げる。
缶コーヒーを買って車に乗る。カセットテープで古い音楽を聞く。でも、すぐには再生しないのもいい。聞いている音楽がカッコいい。
スカイツリーが見える。
東京の公衆トイレ掃除が仕事。
役所広司になにをやらせるのだと思ったが、役所広司はエグゼクティブプロデューサーでもあった。セットではなく、本当の公園のトイレを掃除している。丹念に。鏡で汚れながないか確認もする。
不意にアヤにキスされた日は、家で寝転がりながらルーリードの「パーフェクトテイ」を聞いていたのは、ちょっと笑った。
仕事が終わると銭湯に自転車でいく。着いた途端に店のシャッターが開く。一番風呂がいい。
それから駅地下の居酒屋へ。雨の日もカッパを着て行く。それが平山さんなんだ。
神社のベンチでサンドウィッチ。
木漏れ日をフィルムカメラにおさめる。
同じことの繰り返しだけど、同じ日はない。毎日、違っている。その変化をしっかり楽しんでいる。
平山の恋のようなものもよかった。まさかの石川さゆりにびっくりした。で、三浦友和も。
不真面目なタカシだったが、タカシの耳が好きだと言っていた友人がいた。こういうところが憎めたいところだ。で、彼はタカシを探してどうしたのだろうか。
それからトイレの○✖️ゲームの相手は、誰だったのだろうか。そういうことも明らかにしない。
映画的に解決させるようなストーリーにしないところもよかった。
そんなことは平山さんの日常に関係ない。
ラストの車を運転している平山さんの表情がたまらない。
仕事がなかなかうまくいかない私は、いますべてを手放し、平山さんのような生活でやりなおしたいと心の中で思っていたのかもしれない。こんなに心が動かされると思ってなかった。