tarupon

PERFECT DAYSのtaruponのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.3
年越しで大きめの仕事を抱えていてようやく終わった!。心置きなく、今年お初の映画です。(おそっ!!)
ヴィム・ヴェンダースは若い頃「パリ・テキサス」や「ベルリン天使の詩」を見たけれど・・・果たして今の自分にとってどうなんだろう?それに長いよね・・という気持ちも若干抱きながら、でも役所さんだしカンヌで主演男優賞だったし見たいよね・・・といった気持ちで見ました。

すごくすごく優しく、そして美しい映画だった。
何がよいかって、もう役者、役所広司に尽きる!
台詞は最小限の映画であるけれど、平山を演じる役所広司の表情が豊かでたたずまいが良く、言葉は無くても平山の感情が手に取るように伝わってくる。
公共スペースのトイレ掃除という必要だけれども、労多くしてあまり注目されることもない仕事をもくもくとこなす毎日を送る平山。日々変わらずに単調に見える毎日を平山自身が優しいまなざしで楽しんでいる姿を見れることが何よりも良かった。
後半のエピソードから、彼自身の過去に何かがあって、捨てたものも色々あったのかもしれない。でも、彼の日々の様子から、今の日々は、そうならざる得なかった姿ではなく彼自身が選んで身を置き過ごしている満足な日々だということが伝わってくる。

スカイツリーが見える古い木造アパートの生活は豪奢ではない。でも、きちんと掃除と整理が行き届き、愛する植木と本と音楽(それもカセットテープ!)に囲まれてすごす日々は満ち足りているし、言葉数は多く無くても馴染の店の人との交流や行きかう人とのちょっとした関係性から彼が人間嫌いではないことも伝わってくるし、掃除するトイレを利用する人(多くは彼のことを視界に入れていない)を温かく俯瞰する眼差しにも彼の人間性が伝わってくる。


この世界には、「いろいろな世界があって決して交わらない世界もある」確かに、そうだよね・・・でも、映画は普通にしていたら交わらない世界と私との橋になってくれていると思う。
tarupon

tarupon