ある意味こんなに建築界のノーベル賞などとも言われる、プリツカー賞受賞者、その他佐藤可士和さん、片山正通さんといった著名なデザイナーの作品が一堂に会する映画作品はないかも。。
施錠すると見えなくなる坂さんのトイレは行った時はずっと見えなくなってたと記憶してるけど…
本作の感想に先駆けてやはり日本財団が手がけるTokyo toilet projectは興味深い。
デザイン性はもとより、毎日、それこそ完璧に清掃の行き届いた公衆トイレというのも日本の衛生観念とか、本作の伏線になっているかもしれないと思うのは考えすぎかな。。
あらかた登場していたけど一番好きな藤本壮介氏の「西参道公衆トイレ」が竣工時期の影響か出てこないのがとっても残念。
そんなトイレたちを毎日綺麗に磨き上げるの役所広司演じる平山、彼の規則正しくも満ち足りた日常を綴った物語、その名も『パーフェクト・デイズ』
ほぼ正確に繰り返される毎日、おそらく違うことといえば木々が作り出す陰影や、行く先々の人々くらいなもの。
ストーリー自体はとっても単調で、何なら退屈なくらい。でもだからこそなのかループされるアンビエントな音楽に、徐々に慣れ親しみ、そこから別のビートが重なりあい高揚してくるような感覚。
家族の存在や父との確執、細やかな予期せぬ交流や恋愛感情などなど。平山の人生やエピソードは不在なままなのだけれど、規則正しい毎日が描写されたあとだからこそなのか、一つ一つの小さな出来事が印象的で愛おしい出来事にさえ思えてくる。
でもそんなものなのかもしれないな。
日常生活なんてRPGゲームみたいに次から次へと胸踊るイベントが起きる訳でもなくて、ただただ単純な日々の繰り返し。
平山の日々は滑稽でくだらないと切り捨てるような言い方をされるなもしれない、派手さも面白さもない毎日かもしれないけど、そんな日々を真剣に大切に過ごすからこそ、大切なものを見落とさずにいられるのかもしれない。
今度は今度、今は今
モノやコトが飽和した世界で目まぐるしく生きなくても、満ち足りた穏やかな世界はいくらでもある。そんなことを作品が上から諭してくる訳ではないけれど、そんなことを問いかけられてるような気さえした。
平山の心のうちまではわからないけれど、満ち足りていることの良し悪しなんて人と比べる必要もないし、幸せを感じる術はいくらでもあるでしょうに…なんて。
ラストシーンはそんな世界にとどまり暮らしている平山のさまざまな感情に溢れているようで、じんわりと切ない気持ちになった。
多くは語らない物語に不満げな、娯楽や情報に溢れた生活に飼い慣らされた自分を自省しつつ…
自分も大差ない毎日に思えるけど、当たり前に続けていくことができているこの些細な日々は、perfect days なのかもしれないなと思えた。
田中泯さん、柄本時生さん、中野有紗さん、アオイヤマダさん、あと長井短さんなどなどなど、すれ違っては通り過ぎる人々も個性たっぷりで良かった。
