LEO

PERFECT DAYSのLEOのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.9
トイレ清掃員である平山が、一見何も変わらない日々の繰り返しの中で、小さな変化を楽しみながら一瞬一瞬を生きていく話。

毎朝ブルーの空気の中、竹箒の音で目覚めて植木に水をやり、自販機でコーヒーを買って飲んで仕事に向かう。
街は朝日とともに次第にオレンジ色に覆われていく。
昼、白い木漏れ日が差し込む公園のベンチに座り、昼食を食べながら同じ瞬間は二度とない木漏れ日をフィルムカメラに記録する。
夜、煌めくネオンが街を包みだす前に銭湯に入り、安居酒屋で酒を飲みながら同じものを食べて、パープルのネオンに染まるアパートに帰り、燈色の電球の下で文庫本を読み、眠りについてモノクロの夢を見る。
主人公の平山はこの毎日を楽しみ、関わる人々とのやり取りによって微妙に揺れる部分もまた楽しんでいる。

そんな絵画のような画面と、平山を演じる役所広司さんの人を遠ざけず、かと言って近づけもしない演技が絶妙に混ざり合って、この素晴らしい映画が生まれたんだろう。
観ているうちに、「こんな必要最小限のシンプルな生活も悪くないよね」と思えてくるのが面白い。

正直、役所さんは好きだが、『ドライブ・マイカー』も『ノマドランド』もピンと来なかった自分のテイストに合うのか心配だったが、この作品は好き👌

まぁ正直全てを受け入れられた訳ではない。
トイレ清掃員がトイレ内のゴミを素手で拾う。
いくら手を洗っているんだろうけれども、トイレ内で膝をついてまで熱心に掃除しているツナギを触っている手でサンドウィッチ素手で掴んで食べる。
仕事場に姪っ子を連れて行き仕事をさせる。(平山が望んだわけでないにしても)
カセットテープを盗んでおいて、なんだか勝手に感極まって泣いたりキスしてきたりするアヤとか。

その他にもチラホラと「いや、無いわ~」と思う部分もあった。
でもいいのだろう、これはドキュメンタリーじゃなくて“お話”なんだから。

この平山の生活、何かに似てるなぁと思ったら、どんどん先へ先へと加速していく現代社会を忘れて、森の中でキャンプをしている感じ。
そう、役所広司さんも「彼(平山)だけ森の中で、ゆったりと生きているように感じた」と語っているように、平山は大都会“東京”のど真ん中で、ソロキャンプをしているんだ。

という現実のような虚構の世界なんです。
LEO

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