LEO

博士の愛した数式のLEOのレビュー・感想・評価

博士の愛した数式(2005年製作の映画)
4.0
交通事故による脳の損傷で記憶が80分しか持続しない数学者「博士」と、彼の家にやって来た新しい家政婦、そして彼女の息子「ルート」の心のふれあいとそれぞれの成長を描いた話。

原作は未読だが、皆さんのレビューを見るとそれが正解だったらしい。
更には内容も知らなかったんで、期せずして『ビューティフル・マインド』に続く障害を持った数学者の話に連荘w

正直“あと何日で死んじゃいます”とか“記憶が次々消えていきます”って話ばっかりの日本映画に辟易しているんでずっと敬遠していたのだが、観て良かったと思える素敵な映画でした。

ルートへの博士のかける言葉の温かく優しいこと、ここだけで心が温まる。
そして博士を傷つけないように、「その話は聞いたとは絶対に言わないこと」と約束し合う親子の優しさ。
なんと温かいのだろう。
素数、虚数、完全数、階乗、友愛数、ネピア数、オイラーの公式etc.という数学の言葉を自然に、博士と母と10歳のルートとの会話に盛り込んだストーリー構成が、とても優しく心に沁みて来る。
大人になって数学の先生になったルートが、学生に対し、黒板に様々な数式を描いて博士との思い出と共に数学の美しさを解くシーンも良い。
変わらない3人の関係とそれを押し流していく時間、迫る老いと別れの気配…。

特に大事件が起こるわけでもなく、ドロドロの愛憎劇もなく、単にちょっとだけ普通じゃない人間関係の日常を切り取っただけのストーリー。
でもこれは決して悲しい物語でなく、その刹那刹那を大切に生きる人たちの前向きな物語なのだ。

自分は完全に文系人間なのですが、この物語の中のような感じで数学を教わってたらどうなっていたんだろう。
数学は身近なところにいつもあるはずなのに、ただただ公式を覚えて、試験のために問題を解くことばかりやって来たんで、学生時代は全く数学の魅力に気付けなかったからなぁ。

何か“全てが上手くいきすぎる”っていう人もいるみたいですが、こういう人たちのこういう人生があったっていいじゃないか。
何回も観たくなる映画です。
LEO

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