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落下の解剖学のくまねこのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.4
「落下の解剖学」をTOHO日本橋で鑑賞。
ジュスティーヌ・トリエ監督作品。
カンヌ映画祭パルムドール受賞、第96回アカデミー賞で主要5部門にノミネート。謎解きされない法廷ミステリーのような映画でした。

(あらすじ)
人里離れた雪山の山荘で、男が転落死する。はじめは事故と思われたが、次第にベストセラー作家の妻サンドラに殺人容疑が向けられる。現場に居合わせたのは視覚障がいをもつ11歳の息子だけ。事件の真相を追っていく中で、夫婦の秘密や嘘が暴露されていく…

こんなに本格的な法廷劇映画は初めて観た。あの数回にわたる長い法廷シーンでは、劇場の観客一人ひとりが裁判を見守る傍聴人になりきって見てる臨場感と緊張感があった。

各登場人物は虚実入り乱れて描かれており、誰にも感情移入させないようなモヤモヤする描写の連続。

容疑をかけられた妻サンドラと息子ダニエルに対して、我々観客は同情と猜疑心を半々にしながら見ていく事になる設定が見どころかもしれない。

中盤、あの回想される夫婦喧嘩シーンの痛ましさたるや…。主演ザンドラ・ヒュラーのリアルな演技が凄い。

無罪と審判されただけで、事件の謎解きが解決したわけではないため、これはミステリーとはいえない絶妙な作品だった。ラストに残るあのモヤモヤ感は監督の意図したところだと思う。

当たり前のことだが、登場人物の数だけ真実が存在し、それはそれぞれが正しい。

(メモ)
愛犬スヌープくんの一連のシーンは編集で作ったものではなく、全て彼の演技ということに驚く。(スヌープ・ドッグとか50セントのP.I.M.Pが流れるのも可笑しい)
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