hiyo

落下の解剖学のhiyoのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5
パルムドッグ賞に納得です。でもどうやって撮影したのかは気になります。

裁判が進んで少しずつ夫婦の人となりと関係性が明らかになっていく中で、口論のシーンが一番印象的でした。それまでずっと静かに話す場面が多かったので、声を荒げて言い争う強さがより強く残りました。
口論の内容も、ジェンダーロールが逆転していたのが新鮮に感じて覚えてるのかも。

裁判で何度かサンドラが指摘していた、「全体の中の一部」によって印象が変わるというのはその通りだと思う。あの口論だけ聞けば夫婦関係に埋めがたい溝があるように見えるけれど、実際はどうだったのか、鑑賞者は生きている夫の言葉はほぼそこしか見られないのでわからない。
証拠をいくら集めてもわからないことは「信じるふり」ではなく賭けるしかないというのもそうで、サンドラを弁護した人たちはそうしたのだと伝わりました。彼らには、裁判後もサンドラとの暮らしが続いていくし、11歳のダニエルには成人するまでほとんど避けられないことなので。
それが「面白さ」を優先して事件を消費して終わりの世間との差だとも思います。

結局わかったのは、裁判の結果であって事件の真相ではないところに爽快感はないけど考えさせる余韻があって、それがわたしには面白く感じました。
hiyo

hiyo