このレビューはネタバレを含みます
ホラーやグロは苦手なので目を瞑ってしまうシーンもありましたが、アクションやバディの展開は熱くて面白かったです。
人権がない家に縛られた子どもに救いがなくて、それでもその悍ましさを、主人公である水木が悍ましいものとして反射的に拒絶する反応を描くことで、人倫にもとる行為だと示されていてほっとしました。
でもやっぱり、沙代に救いがなかったことが悲しいです。時弥は言葉を残せたけど、沙代はそれすらなかったので。
前評判を聞いて観に行ったのですが、思っていたよりもずっと太平洋戦争というか南方戦線での兵士としての体験（玉砕命令を下しながら、自分たちには適用しない上官とか）や、より弱い立場の人間を使い捨てにする権力者の汚さについて描かれていて、そこもよかったです。
水木の権力欲の根本にそれらの体験があるという構成であることで、物語の本筋にも戦争の無益さどころか有害さがまざまざと伝わるようになっていたと思います。
覚醒剤のような秘薬Mを使い、昼夜を問わず働き続ける労働者を搾取する構造は、血液銀行の上司がいうように「戦争は続いている」と言えるし、そのように築かれた繁栄の虚像が剥がれて、中の伽藍堂が顕になっているのが現代なのだと思いました。
現代の日本に残っているのは、作中で示された希望ではなくて、24時間働けという強迫的な根性論だけなのではないかと思うとゾッとします。
