Mariko

落下の解剖学のMarikoのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.9
法廷ものでもミステリーでもなく、いや、2時間半のかなりの部分を占める場面が法廷ではあるのだけど、そこが本質ではなかった。
"a fall"とはおそらく、物理的=死亡の原因 と 比喩的=関係性の崩壊 のダブルミーニングであり、その構造を紐解いていくこと=anatomy、という実によくできたタイトルなのだけど『落下の解剖学』になっちゃうとちょっと伝わりにくいのが難というかなんというか(それを狙った?)。
『ゆれる』と印象が似てる。

このものすごい情報量をほぼわからない言語(フランス語)で喋られると字幕に張り付いていないといけなくて、途中集中力が切れて意識が飛びそうになったレベルの疲弊っぷり。ザンドラ・ヒュラーが、フランス語では喋りきれないから、と、英語で話しはじめた時には「あー助かった」と思ってしまった笑

そのザンドラ・ヒュラー、これが凄かった。この人結構観ていて、昔はドイツの地味なキルステン・ダンストみたいな印象だったけど、気づいたら驚くべきポジションにきてるのね。あと凄かったのは、犬。

ちょっと10年前の我が身を振り返って苦しくなる側面もあって、観客を翻弄するこの脚本は素晴らしいし、映画としても実によくできてはいたけど、ここまでグッタリする映画はそんなに観たくないかな。ものすごく元気な時に観たら評価もっと上がるかも笑。
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