このレビューはネタバレを含みます
物語はとてもシンプルで、二人の男女が恋に落ちる過程を描いたラブストーリー。
不幸な出来事によって二人の距離はなかなか縮まらないけれど、めげずに歩み寄る二人の健気さと、それを手助けする人々のやさしさに心うたれます。
登場人物が置かれている状況はとても厳しい。アンサは不当な理由で解雇され職を転々とするし、ホラッパも劣悪で危険な環境で働かされている。加えてラジオからはロシアのウクライナに関する憂鬱なニュースが毎日のように流れてくる。
そんな環境の中でも彼らは人としての尊厳を失っていない。奪われるから奪い返すのではなく、奪われてもなお与えようという姿勢には感銘を受ける。自分も彼らのような人間でありたいと思えます。
「デッド・ドント・ダイ」が流れるシーンにはびっくりしたけれど、人間への信頼やオフビートな笑いのセンスはジャームッシュの作品とも通ずるところがある気がする。
現代を舞台にしている割に、デジタルが全然登場しないことには違和感を覚えたけれど、もしアンサとホラッパが最初からSNSのアカウントを交換していたらまったく別の物語になっていただろうとも思う。
アナログな世界ゆえの切なさ、好きだなと思った。昭和歌謡から感じるものに近いかもしれない。
2024年2本目