カウリスマキ作品を観るのは初めてだった。
陰鬱や疲弊にまみれて気が滅入るような毎日。旧式のラジオは、遠くの国で行われている戦争が地続きであることを知らせる。そんな中でもひとりの人間とひとりの人間は出会い、地味に物語が始まる。
iPhoneなんかを出してこないアナログさ加減がいい。電話番号を書いた紙を失くしたホラッパが映画館の前で煙草を吸って待ち続けた痕をアンサが見つける場面なんかはかなりロマンチックだった。
派手さはない。でも人間の尊厳はある。生活は地味で、うっかり嫌になることもあるけど、うれしいことはうれしい、そう思える感受性を持ち続けたいと感じた。