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リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシングのYAEPINのレビュー・感想・評価

4.2
『ル・ポールのドラァグレース』に出場したクイーンたちが、こぞってリトル・リチャードの仮装をしていた理由が分かった気がする。

彼のことは"Tutti Frutti"と底抜けに明るい話し方くらいしか知らなかったが、その爆発的なエネルギーの内に、ロックの創始者として適切に評価されない燻りがあったことが分かる。

プレスリー、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、皆ブラックミュージックに多大なる影響を受けながら、そのルーツは顧みられることなく、彼らの名だけが天井知らずの人気を獲得していく。
それは、黒人が白人を脅かし、たぶらかす存在として恐れられ、より「安心・安全・品行方正」な白人が持ち上げられた結果だった。
映画『エルヴィス』はブラックミュージックのルーツを蔑ろにすることなく、真摯に取り上げた作品だと思っていたが、当事者からすればそれでも納得できない表現はあったことだろう。(とはいえ、この作品でアルトン・メイソンが演じたリトル・リチャードの姿には釘付けになった。)
今後も、見過ごされてきた歴史に適切にスポットが当たることを願うばかりだ。

リトル・リチャードはゲイで、異性装でセクシャルな歌詞を歌い、ドラッグに溺れながら、同時に神の世界に仕えようとしていた。
敬虔で保守的なキリスト教コミュニティに身を置き、自分は神の愛を受けられるのか、引き裂かれるような不安や孤独感を持っていたようだ。
時に屈折した、捉えどころのない複雑な側面を持ちつつも、堕落することなくあそこまで長生きしたことだけで伝説的なことだと思う。

本作は、ふんだんに本人のインタビュー映像が使用され、リトル・リチャードの変遷や大きすぎる影響力がよく分かるドキュメンタリーだった。
だが、光の粒子みたいなエフェクトはちょっと安っぽい感じがした。
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