リミナ

北極百貨店のコンシェルジュさんのリミナのレビュー・感想・評価

3.9
※原作未読

とある百貨店に訪れた会話のできる多種多様な動物との接客を通して成長する新人コンシェルジュの物語。

監督はTVアニメ『ボールルームへようこそ』で監督を務めた板津匡覧氏。劇場版では本作が初監督作品となる。

冒頭から目に飛び込むのは軽やかで表情豊かなアニメーション。初めて北極百貨店に入るときの背動はこちらまでワクワクさせられる。キャラの表情や芝居もデフォルメではあるけれど、細やかでありノイズにもならない自然さ。TVアニメ含めて絶滅危惧というのか、懐かしさと新鮮さが同居する表現だった。クレジットには錚々たるベテランアニメーターが勢揃いしており納得の作画。

本作では現実に存在する動物をモデルに人間の言語を発したり2足歩行をするアレンジがされた多種多様な動物が登場するが、その歩き方や姿勢が描き分けられている(どこまで現実に即しているかは置いておいて)。百貨店という舞台の特性上、その動物が画面内に何十匹も登場し、なおかつ作画で動かしている物量は劇場作品を観ているんだという感覚にもなる。

物語は人間の都合で絶滅に追い込んだ動物と正面から向き合って、問題を解決していく罪の清算とも言えるもの。大量生産大量消費の象徴であり現実では衰退の一途を辿っている百貨店に絶滅危惧種の動物を客として招き入れ人間が接客するという構造も皮肉交じりである。
もし現実でも言葉が通したコミュニケーションが取れたら絶滅することもなかったのだろうか。

そして声優面では津田健次郎氏のとあるシーンの演技が繊細で素晴らしく、思い出しただけでも目に涙が浮かぶ。

70分という短編ながら満足度の高い作品だった。
大人にも子供にもこれはオススメ。
リミナ

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