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瞳をとじてのmoobyooのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.5
ビクトル・エリセ監督が奏でる映画と人生を探す2時間49分の静かだけど壮大な旅が沁みないはずがありません。

22年前に映画の撮影中に失踪した俳優フリオを、映画監督だったミゲルが追想する過程で場所を移動しながら出会う人々との対話で降り重ねて行くロードムービーの一面をも持ち合わせる珠玉の映画時間を体現できます。

失踪したフリオの娘アナを演じるのが、何と『ミツバチのささやき』の少女アナ役のアナ・トレントであり役名も再びアナであることから、本作が続編でないにしても等しいものを意識しているは明白であり、50年を過ぎた今でも印象深い瞳は健在でした。

50年以上のキャリアで長編映画は本作が3本目である異次元レベルで寡作なビクトル・エリセ監督ですが、むしろ新作を撮った事実の方が奇跡であり、例えば列車が駅に到着するシーンの撮り方は『ミツバチのささやき』へのセルフオマージュであると同時にリュミエール兄弟へのリスペクトでもあったり、ある人物の持ち物の一つである"三段峡ホテルのマッチ"は広島のホテルである事実など、直ぐには気づかない要素が多分あちらこちらに散りばめられているのであろう推測も含め、大仰な作風でなく極めて静寂でいて訴えるものは濃密な映画芸術作品です。
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