このレビューはネタバレを含みます
結婚と恋愛って別物だということがよくわかる物語だった。一緒に暮らす相手といちばん好きな相手が別でもおかしくはないはずだけど、この社会でそれを両立させることは難しい。
綿子の木村への愛情がほんものであることはわかるけれど、その感情が行き着くところがないことに虚しさも感じた。
綿子は拘束されることが嫌いな人間なのかもしれない。家庭のことはおざなりで、仕事もしていなければ、連れ子の面倒をみることもない(子供については不倫がきっかけの結婚なので致し方ない気もするが)。
文則とも不倫関係のときはうまくいっていたと語っていた。責任を負う必要がない関係の中でしか、彼女は自分らしくいられないのかもしれない。
文則のねちっこい性格を見ていると「そりゃ浮気したくもなるわ...」と思うけど、たぶん彼も悪意があるわけではなく、ああいうやり方しかできないだけなんだと考えると、あまり他人事ではないかもなと思った。他者と生きるって難しいな...。
文則以外にもネチネチした人がやたらと多かったけど、監督はネチネチ文体に一家言持ってるのかな笑。会話の中のヒリヒリする嫌悪感は独特だった。
声や生活音が立体的に聞こえるのが特徴的だった。映画というよりはドキュメンタリーのような質感だったかも。
劇伴は石橋英子さんでびっくりした。流れるシーンは少ないが印象に残る点は「ドライブ・マイ・カー」と共通している。
2024年5本目