ふき

ブレイド3のふきのレビュー・感想・評価

ブレイド3(2004年製作の映画)
3.5
ヴァンパイア軍団とその長「ドラキュラ」に対抗するために、ダンピールのブレイドと人間軍団が共闘する作品。

二作目の弱点であった「敵を殺すバリエーションが少ない」「ブレイドが手も足も出ないシーンが多い」「クライマックスのヴァンパイア側のドラマとブレイドが関係ない」といった点が、ことごとくカバーされてるのが嬉しい。
敵がヴァンパイア側に戻ったことで、倒し方のバリエーションは豊富になったし、アビーの弓矢の鏃にある紫外線照射装置も絵的に楽しかった。「ドラキュラ&ヴァンパイア」と「ブレイド&人間」の対決に焦点を絞ったことで、話の骨子がシンプルになったのもいい。
なにより、ブレイドがズンズン進みながら片手間レベルでヴァンパイアを殺していく爽快感は、素晴らしいものかあった。ここに関して「敵が弱くなった」と感じる人が多いようだが、私としてはは「これ! これだよブレイド!」と大興奮だった。
敵が強さの表現が、二作目の「ブレイドをボコボコにできるほど強い」から、「超強いブレイドと互角に渡り合えるほど強い」になったのも、敵味方どちらの顔も立てていてよかった。

が、よくない点も多い。
いままでヴァンパイアの奴隷たる人間を一〇〇〇人以上殺してきたブレイドが、ヴァンパイアだと思って間違えて殺した人間一人をことさら問題扱いにするのはよく分からない。今までも、散々人間の死体を残してきただろうに。
警察がブレイドを逮捕するところが序盤なのだから、当然「ヴァンパイアvsブレイドvs人間」よ燃える展開がくると思っていたら、ブレイドが救出されて以降、人間社会が話に絡むことはなし。前述の通り話はシンプルで見やすいのだが、期待した分ガッカリだった。
アクション面でも、人間との戦闘になると途端に普通のアクション映画になってしまうのは、二作目から引き続きの難点といえるだろう。量は減ってはいるが。

だが最大のダメなところは、ドミニク・パーセル氏演じる「ドラキュラ」だ。
長い眠りから覚めたヴァンパイアの始祖であり、ブレイドと同じく太陽を克服した存在、シリーズ最大にして最強の敵、つまりブレイドのライバルなのだが。
普段着は小汚い既製品だし、鎧は中世の兵士が着ていそうな革と鉄のもので、現代社会に馴染んだ一介のヴァンパイアにしかみえないのだ。服を脱ぐシーンもあるが、肉体的な迫力はブレイドやキングに圧倒的に劣り、あげく真の姿は前作のリーパーズとプレデターを掛け合わせた怪人で、とてもではないが強者感はない。
では演出的に貫禄や威厳が出せているかというと、飛ぶでもなくビルの中を走り回ったり、不安定な視線や弱々しげな口元で他者と接したり、掛け声を上げながら剣を振り回したりと、なぜか小物感を煽る方向に向いている。というか、敵を罵る時に「マザーファッカー」と口走るって、数千年を生きた存在としてどうなんだ?
そもそもの話、これは俳優の責任ではないのだが、ドミニク・パーセル氏の顔にボス格の威厳や風格がまったく感じられないのが非常に辛い。敵陣営の顔ぶれが次々に映し出されるシークエンスで、それがありありと感じられてしまった。キャスティングがミスだったとしかいいようがない。
上記のように、現代社会の中で強烈な異物感を発揮するブレイドと唯一比類する存在、満を持して登場した「ドラキュラ」という存在を、キャスティング、演出、美術のすべてが台無しにしてしまっている。これは酷いとしか言いようがない。

と長々と述べてきたが、個人的にはこのオーラのないドラキュラに、チャーミングさを感じてしまったのも事実だ(もっとオーラがないのも見てきたし)。だから作品全体では一作目と同じくらい楽しめたということで、この評価にしたい。
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