いの

哀れなるものたちのいののレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
まずはエマ・ストーンに最大の賛辞を贈りたい。エマ・ストーンはいったいどこまでいくんだろう。彼女は間違いなくフロンティアに立っている。


熱烈ジャンプしてるのに、時々シェスタしちゃったことを正直に申し上げておく。したがってところどころ抜けております。凝りまくった美術とか構図とか、ドアスコープから覗き見たような映像とか魚眼レンズとか、圧巻のゲイジツぶりに妥当な言葉をみつけられなくて困る。作りこみ過ぎなのは、この話に寓話性を持たせたかったからなのかな。


ベラが出会った人のなかにハンナ・シグラがいて、そのこともとてもうれしかった。ハンナ・シグラが過去に演じてきた人物のその先の今を感じさせる役どころで、わたしは彼女を知ってまだ数か月にもかかわらず、とても感慨深い気持ちになった。彼女とのやりとりは、(もうひとりハリーという男性も含めて)意味深いものだった。デフォーの特殊メイクはとても好み。もしかしたらわたしにとって、デフォーのベストを更新したかもしれない(少し時間が経ってからちゃんとわかると思う)。デフォーから普段使いのアクを抜いて、別の種類のアクを注入した感じ。琥珀色のシャボン玉みたいなのもいいですね。


マーク・ラファロの哀れっぷりが可笑しくて最高。うつわ小っつぁいラファロたのしい。大きいハコのわりにガラっガラの劇場、しかも周囲に全く人がいなかったことだし、途中から声をあげて子どもみたいにケラケラ笑っちゃった。もしかしたらこの映画は、有り難がってかしこまって観るのよりも、みんなで笑ってみる方があっているんじゃないかな。そんな風にも感じた。R18+らしいけど、賢い女子高校生にも観てもらいたい映画だわね。一緒に背徳感ちょっぴりあじわいながら楽しみたいくらい(そんなこと書いたらいけません)。


“あ、これはガウェインの結婚だ!”と思うセリフが出てきて、それもとてもうれしかった。お説教臭さゼロ。社会主義者の黒人女性とのつながりもとても良かった。すごいところまで到達したラスト(毒を含みながらも)。直観の鋭さだけでなく、合理的思考も数理的思考も持ち合わせ、だまされたとしてもそんなこた関係なく弱者のために涙を流し、偏見なんてものともせず、子どもからオトナへと。自分の歩き方で荒野を裸足で堂々と歩き、道を切り開いていくような。そんなエマ・ストーンだった。と思う
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